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入学志願者の減少が止まらない「薬学部」の実態 人気復活のカギは就職先?「起業」する薬剤師も

東洋経済オンライン / 2024年3月7日 11時30分

薬学部の志願者数が減っている背景について、取材しました(写真:metamorworks/PIXTA)

国内の薬学部への入学志願者数が減り続けている。特に私立大学でその傾向が顕著だ。

【グラフで見る】減少が目立つ薬学部、私立大学全体と私立薬科大学の入学志願者数の推移

一般社団法人日本私立薬科大学協会の調査によると、2023年度の私立薬科大学(薬学部・6年制・4年制)の入学志願者数は7万4826人(前年に比べて1799人減少)。8年ぶりに増加した前年度から再び減少に転じた。

志願者数が10万人を超えた時期も

薬学部はかつて受験生に人気のある学部だった。

2008年9月に発生したリーマン・ショックを背景とした就職難で、手に職がつく仕事として薬剤師人気が高まり、2011年から入学志願者数が急増。2013年から2017年の5年間は入学志願者数が10万人を超えていた。

ほかの学部も加えた私立大学全体の入学志願者数の推移と比べると、この時期に薬学部人気が急激に高まったことがわかる。

しかし、薬学部は2014年の12万1431人をビークに減少傾向が続く。私立大学全体の入学者数が2020年に始まるコロナ禍まで増加していることと比べると、受験生が薬学部を避け、別の学部を選ぶ傾向が進んでいることが見て取れる。これに伴い、入学定員の充足率が2019年から2021年までの3カ年平均で80%以下になった大学は約3割に達した。

なぜか薬学部の新設は続いている

その一方で、薬学部の新設は続いている。

医学部や歯学部などとは異なり、大学の判断で自由に新設や定員を増やす申請ができたこともあり、2003~2008年の6年間で28学部が新設。さらに2018~2021年の4年間で5学部が増え、現在は77大学79学部となっている。2024年4月には順天堂大学と国際医療福祉大学成田キャンパスで薬学部が開設予定のため、学部間の競争はさらに激しくなる。

学生争奪戦が激しくなるなか、各大学は薬剤師国家試験(国試)の合格率アップに力を入れる。

特に、留年せずに薬学部を卒業して国試に合格する、いわゆる「ストレート合格率」にこだわる。それが受験生や保護者へのアピール材料になり、入学志願者数が増えると信じているからだ。

問題は「ストレート合格率」ではない

だが、こうした動きに異を唱える学長がいる。日本薬科大学の都築稔氏だ。

「もちろん合格率が高いのに越したことはないが、ストレート合格率と入学志願者数にはさほど相関関係はない。それよりも、キャンパスの立地や競合校の影響のほうがはるかに大きい。合格率ばかりを気にするような状況が続けば、この国の薬学部の未来は先細る一方だ」と言い切る。

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