住宅ローンのフラット35、金利「独歩高」の忍耐期 機構が「身銭」を切り、変動金利型に対抗へ
東洋経済オンライン / 2024年3月26日 7時10分
住宅金融支援機構が提供する、長期固定金利の住宅ローン「フラット35」の利用が低迷している。2023年度の利用戸数は、2008年度以来15年ぶりの低水準となる見通しだ。見かねた機構は「身銭」を切って金利を引き下げ、根強い人気を誇る変動金利型との競争に参戦し始めた。
「昨今の金融情勢が続く限り、落ち込みは避けられない」。機構の幹部は肩を落とす。
足元は変動金利型が優勢
フラット35の利用戸数は、2023年4~12月の累計で約2.5万戸だった。2024年に入って復調しているものの、通期でも4万戸をやや超える程度となる見通しだ。5万戸割れは2008年度以来となる。
足元の住宅ローン市場は、低金利が売りの変動金利型が優勢だ。機構の調査によれば、2023年4~9月に住宅ローンを利用した人の74.5%は、変動金利型を選んだ。前年同期の69.9%から上昇している。
かつてフラット35は、金利の先高観を懸念する顧客からの底堅い需要があった。ところが、2022年からフラット35の金利が目に見えて上昇し始め、今年3月時点での最頻値は1.84%(返済期間21年〜35年)。0.5%前後で横ばいを保つ変動金利との差が鮮明となり、顧客に敬遠されている。
フラット35の独歩高の背景にあるのが長短金利差だ。固定金利型の住宅ローンは長期金利を、そして変動金利型は短期金利を参照する。
長期金利は2022年から上昇が顕著になり、2022年末や2023年7月、10月と日本銀行が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用を柔軟化し、長期金利の上昇を容認したことで拍車がかかった。対照的に、短期金利はマイナス圏に抑え込まれ続け、長短金利差は拡大の一途をたどる。
固定と変動の金利差は縮まりそうにない
日銀はこのほど、マイナス金利政策の解除を決断したものの、固定と変動の金利差は当分縮まりそうにない。
住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運営するMFSの塩澤崇取締役COO(最高執行責任者)は、「変動金利は競争が激しく、各行は金利を上げられないだろう。一方、フラット35のような長期固定金利も、アメリカの利下げが始まるまでは高止まり状態が続く」と話す。
3月21日には、SBI新生銀行が住宅ローンの変動金利を年0.42%から0.29%へと引き下げるキャンペーンを打ち出した。
金利上昇が機構にもたらす影響は大きい。機構は銀行のように預金を集めておらず、代わりに金融機関から買い取った住宅ローン債権を担保に債券(MBS)を発行し、資金を調達している。満期までの期間が長いMBSは、投資家から求められる利回りも長期金利の動向に左右される。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
銀行が苦悩「上げられない住宅ローンの変動金利」 客離れ懸念、融資手数料の「負の側面」が顕在化
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 5時0分
-
銀行が苦悩「上げられない住宅ローンの変動金利」 客離れ懸念、融資手数料の「負の側面」が顕在化
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 7時0分
-
団信に落ちた場合の選択肢の一つとしても…金融機関によって金利や事務手数料は違う? 借りる人の条件は?〈フラット35〉に関するQ&A
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月20日 11時15分
-
マイナス金利解除で住宅ローンはどうなる?ファイナンシャルプランナーがラジオで解説
RKB毎日放送 / 2024年4月10日 18時8分
-
環境配慮型住宅(ZEH等)への住宅ローン優遇金利プログラム提供開始のお知らせ
PR TIMES / 2024年4月1日 18時15分
ランキング
-
15月以降の日経平均上昇を裏付ける「3つの追い風」 今後もドル高円安の大幅修正は見込みづらい
東洋経済オンライン / 2024年4月28日 10時30分
-
2「大したことない話なので割愛します」は正しいか…75%が「割愛」を本来と違う意味で使っていることが判明
プレジデントオンライン / 2024年4月28日 8時15分
-
3「プリンを食べるか我慢するか」で人生変わる理由 後悔しない時間の使い方を身につける方法
東洋経済オンライン / 2024年4月28日 18時0分
-
4明治「ザバス」が絶好調!プロテイン飲料最前線 まだ伸びるタンパク質市場へ「オイコス」も参戦
東洋経済オンライン / 2024年4月28日 8時20分
-
5スバル、山崎製パン、キリン……相次ぐ“事故” 問題の根っこに何がある?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月24日 8時35分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください