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恩田陸作品史上「もっとも美しくヤバい天才」爆誕 萌え保証!一人の天才少年をめぐる「春」の物語

東洋経済オンライン / 2024年3月29日 12時30分

その膨大なインプット量によるものなのだろう、作品中には、恩田の想像によるコンテンポラリーバレエ作品がいくつも出てくる。「この曲だったらこういう踊りかな、という妄想です(笑)。これまで聞いてきた音楽から、これだったら踊れそうだな、なんて、作品の演出を考えるのは楽しかったですね」。

いかに好きだからとはいえ、畑違いのダンス作品を妄想できるまでに観て学習する恩田の知的好奇心と、得た知識を原料に架空のダンサーによる架空の舞台を生成する妄想力と。恩田陸という作家がこの時代の優れた人気エンタメ作家の座にあるわけだ……と舌を巻く。

今作『spring』は、萬春という天才ダンサーの成長と活躍を、各章、4人のキャラクターがそれぞれの視点で立体的に語っていくという、4章立ての巧みさも印象的だ。

「筑摩書房のPR誌『ちくま』2020年3月号からの長期連載ですが、4人の語りで1章10回、全40回で終わるっていうのを最初に決めていたので、予定通りでした。『蜜蜂と遠雷』もそうでしたが、私の連載は『いつ終わるんだろう』と作者もわからないなんてのもあるんです。最後の章は、実は春本人を語り手にするとは決めていなくて、3人称にしようかと思っていたんですよね。ところが意外なことが起きて」

キャラクター本人がしゃべり出した

漫画家や小説家や脚本家、フィクション作家に話を聞くといつも驚かされる、「キャラクターが勝手にしゃべり出す」という不思議な現象が、恩田の今作にも起きたのだという。

「やっぱり、春本人に語ってもらわなければダメだと。1章から3章まで他人の視点で書いているときは、出来事は語られても、春がどういう性格か、どういう人なのかわからなかったんです、作者にも。でも本人に語らせてみたら意外な性格が出てきて、これまでの“答え合わせ”のようなことが起きた。逆に、本人にしゃべらせてみないとわからないことってあるんですよね」

登場人物たちが、たまたま同時代の同じ場所に、春という天才と“居合わせる”という表現も印象的だった。「才能ってなんだろう、というのも私のテーマなんですけれど。バレエや音楽やスポーツなどの世界を観ていて、才能ある人が揃って出てくるとき、面白いなと思うんですね。日本ではないけれど、パリのオペラ座バレエ団はそれぞれの世代に固まって出てきて、一緒に切磋琢磨している。将棋の羽生世代じゃないですが、一人だけじゃなく、ライバルと巡り合わせるのはすごく大きいことだと感じるんです」

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