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小林製薬の「紅麹問題」初動対応の"致命的な欠点" リスク広報から見て何が悪かったのか?

東洋経済オンライン / 2024年3月29日 0時44分

もし、健康被害の原因が紅麹ではなかった場合どうなるか?と想像してみるとどうなるか。

自主回収、廃棄のコストがかかってしまうし、売れたはずの商品を売らずに廃棄することで、機会損失も生じる。それ以上に、企業イメージ、商品イメージ低下のリスクも生じる。影響の大きさを考えれば、情報開示に尻込みしがちになってしまうのも理解はできなくはない。

筆者は理系(物理学)の大学院を出ているが、現代科学は細分化、高度化が進んでおり、同じ分野でも専門分野が少し違うだけで研究内容が理解できなくなる。

医学、薬学、化学の応用化学は、人の健康、安全に重要な影響を及ぼす分野だが、実際に健康被害が起きた時に、因果関係を特定することや、解決策を講じることに困難が生じることも実際に起こりうる。

原因が特定できず、リスクの大きさも予想することができない時点で、どのような対応を取るべきなのか? 難しい問題だが、企業がこうした問題に直面することは少なからずある。

一般的に言えば、その時点で把握できている情報を適正な範囲に公開し、並行して対応を行うことは重要だ。

小林製薬がそうしていれば、健康被害ももっと小規模なものに留められたのではないか?という見方は当然生じるだろうし、そうした迅速な対応をとらなかったことは批判されてもやむをえないことだ。

少なくとも、監督官庁である厚労省に早い段階で状況を報告し、相談することはできなかったのだろうか。厚労省への報告義務はなかったとはいえ、関係各所と適切に連携を図ることは、リスク対応においては重要である。監督官庁に報告しておけば、リスクの分散を図ることもできたはずだ。

「有事対応」の体制ができていなかった?

軍事用語から借用して、リスクマネジメントにおいて、問題が起きていない通常の状態を「平時」、危機的な問題が発生している状態を「有事」と呼んでいる。

国家の運営と同様、企業経営においても平時対応と有事対応の両方が重要になる。しかし平時、つまり平和な状態が続くと、つい有事対応に疎くなりがちだ。平時においては業績が好調で評判もよい企業が、有事対応を誤り、さらなる危機に陥ってしまうことがある。

やや古い事例になるが、食中毒事件への事後対応を誤ったこともあって、経営危機に陥った雪印乳業の事例を思い出してみればよいだろう。

小林製薬についても、有事における初動対応が不十分、不適切であったがゆえに、現在の危機に陥ってしまったと言える。

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