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道の駅から「おばあちゃんの味」が消える深刻事情 「いったいどうすれば」困惑する生産者たちの声

東洋経済オンライン / 2024年4月1日 11時0分

高知市で開催される「日曜市」に並ぶ漬物。今、こうした漬物の販売が危機的状況を迎えている(写真:筆者撮影)

各地の道の駅や産直市などで売られる手作りの漬物が、存続の危機に瀕している。食品衛生法の改正に伴い、2024年6月以降は、専用の加工場など衛生的な施設で製造した漬物しか販売できなくなるからだ。

【写真を見る】「いったいどうすれば」と困惑する、手作りの古漬けを売る野村さん

各地の道の駅や直売所によると、やめる人はかなりの割合にのぼると思われ、地域で長年愛された味が危機を迎えている。実態を追った(全2回。今回は前編です)。

いったいどうすればいいのか…

「いったいどうすればいいのか困っています。長年喜んでもらってきた味を、できるだけ守り続けたいが……」

高知県高知市で、毎週開かれる日曜市。

300年以上の歴史を持つ街路市で、全長約1kmにわたり、新鮮な野菜や果物、水産加工物や菓子など、地域の味がずらりと並ぶ。農家が作る大根やキュウリ、白菜などの漬物も人気で、それぞれの馴染みの味を求めて、地元の常連客や観光客が多く訪れる。

その中の1つ、大根やカブの自家製「古漬け」を販売する野村慎一さん(72)は、祖父の代の60年以上前から、日曜市で漬物を販売する。食欲を刺激する昔ながらの古漬けの香りに誘われ、多くの客が足を止める。

野村さんが作る古漬けは、1年物から6年物まであり、年数を重ねた漬物ほど味がまろやかになる。店先には、野村さんが「この木樽で漬けないと、この味にならない」という年季の入った木製の大きな漬物樽がずらり。植物性乳酸菌たっぷりの、昔ながらの製法にこだわった漬物だ。

岐路に立つ手作り漬物の販売

季節の無農薬野菜を使った漬物作りを父親から継承し、日曜市で販売し始めて40年近く。誇りを持って続けてきた漬物作りが、岐路に立たされている。理由は、食品衛生法の改正だ。

漬物はこれまで、多くの都道府県で条例に基づく届け出をすれば販売できた。ところが、2021年に改正された食品衛生法の施行によって、今年6月以降は、専用の加工場など国が定める衛生基準をクリアする設備で製造した漬物しか販売できなくなる。

加工場と生活場所を明確に区分けすることや、水回り設備の設置、水が染み込まない壁や床などの設備など、衛生基準を満たした施設を整備して営業許可を取得することが必要になった。

改正前からの製造者は、今年5月末までは経過措置で販売を継続できるが、それ以降は営業許可がないと販売できなくなる。

現在、全国各地の道の駅や産直市などで、地域の味として売られる漬物の多くが、農家をはじめとした個人による少量生産で、自宅の台所や納戸などで作られている。

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