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Supreme新作を「買える人」「買えない人」本当の差 現在社会で早い者勝ちがもはや通用しない訳

東洋経済オンライン / 2024年4月4日 14時0分

「行列代行」と呼ばれるビジネスが生まれ、現代社会では早い者勝ちの原則が崩壊している(写真:Graphs/PIXTA)

今日において「所有」ほど曖昧でわかりづらいものはないかもしれない――。例えば、あなたはkindleで本を買い、サブスクで音楽をダウンロードしているが、それらははたして「所有」していることになるのだろうか。そもそも所有を決める根拠とは何だろうか。

所有権の世界的権威の1人で、法学者マイケル・ヘラーらは、人気ブランドのシュプリームの行列代行などを引き合いに、現代社会では「早い者勝ちが通用しなくなっている」と説く。その理由とは(本稿は、『Mine! 私たちを支配する「所有」のルール』から、「遅い者勝ち」について一部抜粋・再構成してお届けします)。

最高裁の注目裁判に何日も並ぶ人たち

首都・ワシントンで無料見物できる最高のショーは、最高裁である。荘厳な法廷内は意外に距離が近い。アメリカ国内で最も権威のある裁判所で下される裁きからほんの数歩のところにいて、国内最高の弁護士による弁論を聞くこともできる。これは民主主義の最高の形であり、すべての人に開かれ傍聴可能になっている。

妊娠中絶の是非や、銃規制や信教の自由についての裁判を自分の目で見たければ、見ることができるのである。ただし一般の傍聴席は100席程度で早い者勝ちだから、かなり早くから行かなければならない。  

世間の注目を集めるような訴訟では、何日も前から並ぶ人がいる。キャンピングチェアに寝袋、ポンチョ、モバイルバッテリーまで用意して。最高裁は行列の警備まではしてくれないので、行列に並ぶ人たちは互いに監視し合う。割り込みや友人の合流を抜かりなく見張っていて大声で注意するわけだ。またトイレに行きたくなったらお互い近くの人に場所をとっておいてもらう。荷物の見張りもお互いにする。

ところが、である。入場時間になると妙なことが起きる。列の先頭付近にいた汚れた服装の人たちの多くが、パリッとスーツを着こなした男女と入れ替わるのだ。スーツの彼らはさっさと法廷に入って一番いい席を占める。列の後ろのほうに並んでいた人たちがまだ入場してもいないうちに。いったい何が起きたのか。  

これは「行列代行」とか「並び代行」と呼ばれるビジネスだ。それを専門にする会社が並び屋を雇って賃金を払う。並び屋はホームレスであることもめずらしくない。彼らは何日も前から列の先頭を確保し、あとはひたすら待つ。そして最後の瞬間に、つまり「法の下の平等な正義」と刻まれた裁判所の扉が開かれる直前に、依頼主と交代するのである。

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