Z世代が囚われる「第三者目線」という強迫観念 メリットなき個人行動の「コンプライアンス化」
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 11時0分
若者と接する場面では、「なぜそんな行動をとるのか」「なぜそんな受け取り方をするのか」など理解しがたいことが多々起きる。
企業組織を研究する経営学者の舟津昌平氏は、新刊『Z世代化する社会』の中で、それは単に若者が悪いとかおかしいという問題ではなく、もっと違う原因――たとえば入社までを過ごす学校や大学の在り方、就活や会社をはじめビジネスの在り方、そして社会の在り方が影響した結果であると主張する。
本記事では、前回に続き著者の舟津昌平氏と歴史評論家の與那覇潤氏が、Z世代を通して見えてくる社会の構造について論じ合う。
目の前の相手を大事にする「第二者目線」の喪失
與那覇:『Z世代化する社会』の大事な主張は、色んな人がZ世代の特徴をうんぬんするけど、彼らは「いまの社会のあり方」を素朴に体現しているだけなんだと。だからオトナの年長者たちだって、知らず知らずに「Z世代のようになりうる」というものです。
たとえばZ世代の若者は、「第三者の目線」をすごく気にすると。しかしオトナが営む企業や政治でも、炎上やスキャンダルが起きるごとに「第三者委員会を作れ」「第三者の視点で検証を」と言われる。もちろんそれ自体はいいのですが、しかし第三者を意識するあまり、かえって「第二者」をないがしろにする傾向が強まってはいないでしょうか。
本書によれば、Z世代の「第三者志向」の典型がSNSです。つまり関係のない人の目にどう映るかを意識して、投稿の内容を決める。最近はインスタ映えを狙いすぎると「イタい」と叩かれるので、盛った写真には前もって「自己満(足)です」と添えておくとか(笑)。企業のコンプライアンスが過剰すぎないか、と言われることもありますが、いつしか個人の行動まで「コンプライアンス化」している。
與那覇:第三者の目線にばかり意識がいって、実際にリアルで会っている相手=「第二者」を大事にしないのは、どこか倒錯していると思うんですよ。歌手やアイドルなど、自分から遠い存在を積極的にケアする姿勢は「推し活」として、本書も採り上げるとおり近年評判です。でも、ふだん気に入って日常的に使う飲食店だって、「推し」と言えば推しでしょう? それなのにコロナが流行ると、単に行くのをやめるだけじゃなく、「私は外食しません!」とまでSNSにわざわざ書いたりして。
この店は自分の「推し」なんで、コロナで潰れちゃったら困るから、自粛せず食べに行ってるよ! とPRできた人は本当に少なかった。それはまさに社会全体が「第三者過剰、第二者過少」な方向で、Z世代化している表われだったと再認識しましたが、どうでしょう。
学生に広まる「となり見るシンドローム」
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