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Z世代が囚われる「第三者目線」という強迫観念 メリットなき個人行動の「コンプライアンス化」

東洋経済オンライン / 2024年6月27日 11時0分

舟津:ただそれは「コミュ力」、コミュニケーションのための力の使い方としては明らかにおかしいんですよ。ところが、「そんなの意味がわかんないからやめようよ」と言わなくて、「なるほど、そっちのほうが得するな」とか「強いな」とか「勝てるな」とか思い始めると、コミュニケーションが成り立たない。目の前の人としゃべりたいのに、目の前の人が私に向かってしゃべってくれない。相互行為としての対話あってのコミュニケーションなのに、プレゼン合戦みたいになっちゃう。

與那覇:「かわりばんこ」にプレゼンするのは、そもそも会話なのかみたいな。

舟津:プレゼンって要は自己利益のために都合よく提示することですから、日常のコミュニケーションには必要ないはずなのに、日常のやり取りがプレゼン合戦になって、二者間で話すことすら第三者に向けて見せるものになっている。

與那覇:目の前の相手よりも第三者の評判を気にするのって、本来ならTVに出たりする「有名人」の行動様式ですよね。

日本では2011年の東日本大震災がSNSの普及を加速し、当時は「会いに行けるアイドル」と呼ばれたAKB48のブームがピークでした。彼女たち自身、半ば仕事としてSNSで発信したりもしていた。ところがその後に起きたことは、普通の人が「まるで芸能人であるかのように」振る舞わないといけない空間へと、SNSが変わっていったわけです。

私生活や秘めた本音を公開し、プライベートとパブリックをわざと曖昧にして魅力を生みだすのは、インターネット時代のタレントや政治家にとっては有力なツールになったけど、いつしか人気商売ではない人まで、そこから離れる自由がなくなっている。

舟津:インスタグラムとかは象徴的かもしれないですね。普通の学生が、どこに行ったとか、おいしいもの食べたとかを芸能人みたいに見せる。ただ冷静に考えると、誰に見せているのかわからない。私もSNSをやっているので一部は加担している部分もありますけど、不特定多数に向けて自分自身を切り売りする前提になった社会、なんですよね。芸能人はそれでお金を得ていますけど、一般人は何も得ていない。

與那覇:おっしゃるとおりで、そこが不均衡というか、きわめて不平等ですよね。

曖昧な基準で一発退場をくらう社会

舟津:第三者目線は強迫観念を喚起します。たぶん若者はそうした強迫観念をいつも持っていて、友達グループから少しでも外れたら「消される」と、本気で信じている部分がある。私は大学生たちと接していて、同質化傾向が強いなと感じるんですが、こうしたキャンセルカルチャーの強迫がその傾向を強めているんじゃないかと思います。

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