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ライオンCM「警告音に似ていて物議」が必然のワケ 「テレビCMの音」の重要性は年々増している

東洋経済オンライン / 2024年9月5日 13時57分

「事前に気づくべきだった」というのは正論だが、一方で、チェックし切れなかった状況も理解できる。

「音」が重要な時代になった

以前から、テレビCMの放映時間は「トイレタイム」と呼ばれていた。つまり、番組の合間にトイレに行く時間という意味だ。トイレに限らず、テレビCMは、視聴者が集中して見ていないことを前提に、「いかに視聴者の注意を引くか?」ということに注力してきた。

ちなみに、「広告」は英語で「Advertising」というが、ラテン語の「~の方向へ(英語のto)」を意味する“ad”と、「向ける」という意味の“vertō”を語源とする。つまり、「振り向かせるのが広告」ということである。

デジタル技術の進化によって、個人の嗜好やニーズに合わせた情報発信が可能になってはいるが、興味がない人にも振り向いてもらい、興味を持ってもらうことが、依然として広告の重要な役割だ。

現在では、スマホが普及しており、CMの時間帯は「スマホタイム」になっている。さらに、コロナ以降は在宅勤務も一般化し、仕事中にテレビがついていることも増えてきた。そうした人たちの注目を引くことも重要になっている。

映像は「見ない」という選択肢もありうるが、音は「(聞きたくなくても)聞こえてくる」ものだ。視聴者の注意を引くために、音は重要な役割を果たすが、デジタル時代の現在では、音の重要度はさらに増している。

今回のライオンのCMでも、視聴者を引きつけるために、あの効果音を採用した可能性はある。ただし、「Jアラート」の音を意識したということは考えにくい。そのような誤認が起きる可能性があることが事前にわかっていれば、効果音として活用することはなかったはずだ。

一方で、「音が似ている」と言っても、警告音とそっくりなわけでもないので、事前に気づかなかったということは、十分に想定できる。

アナログ放送時、放送休止中に流れていた砂嵐を覚えているだろうか。あの音に滝の映像を合わせたものと、本物の滝の映像とでは区別できないという実験もある。今回のCM制作側も、風船の映像とセットにして聞いているから、風船の膨らむ音として刷り込まれてしまっていたのかもしれない。

「音」をめぐる快、不快の境界線はどこか

媒体料金(広告を出すために支払われる料金)は同じだから、CMを放映する企業としては、より多くの視聴者の注目を集める表現にしたい。一方で、それが過剰になってしまっては、視聴者が不快に感じ、批判を浴びて逆効果になる。そのバランスが非常に難しい。

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