地方私鉄と「台北メトロ」友好協定の本当の狙い 「知られざる観光地」求める訪日客取り込めるか
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 7時0分
交通業界を含め、観光産業全体での人材不足が叫ばれる中、人材の発掘、育成は喫緊の課題である。どんなにインバウンド需要が伸びても、受け入れ側の体制が整っていなければ本末転倒だ。「ヨソ者」視点という意味では、アルピコ交通と台北メトロの友好協定も、今後、例えば職員を招待するなどして、台湾目線で長野県内のプロモーションなどが実現するとすれば、さらに大きな可能性を秘めていると言えそうだ。
「日本人より日本を知っている」訪日客
少子高齢化が深刻化する今、地方のバス、鉄道を中心とした交通事業者は、岐路に立たされている。日本の公共交通は独立採算が前提であることから、利用者数を増やさない限り抜本的な対策には至らないが、人口増加も見込めない中、労働力不足も追い打ちをかけ、減便や廃止が相次いでいる。
地方交通事業者が生き残る道は観光需要の創出、とくに外国人旅行者の取り込みにかかっていると言っても過言ではないが、一方で、日本は今、増大する外国人観光客によるオーバーツーリズムという問題も同時に抱えている。
2000年代初頭、2010年までの年間訪日観光客1000万人を掲げてスタートした「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は、当初は計画を下回っていたものの2013年以降、急激な伸びを見せ、2019年の訪日観光客は早くも3000万人を突破してしまった。その間に受け入れ側で対策が取られてきたかといえばそうとも言い切れず、オーバーツーリズムが発生するのも当然の結果である。
筆者もかつて、インバウンド1000万人達成のために知恵を絞れと、さまざまな宿題を課された経験があるが、蓋を開けてみれば、周辺各国の人々の可処分所得の増加、日本の相対的物価安、そして円安と、外的要因で外国人旅行者は増え続けた。
日本側の要因で大きいのは、タイ、マレーシア、インドネシアなど東南アジア各国に対する観光ビザの免除やビザ要件の緩和くらい(もっとも、これも各国の急速な経済成長に裏打ちされた動きであるが)だろう。
従来は団体旅行に参加するか、日本側からの招聘状や保証人がなければ渡航できなかったのが、これらが不要になったことで、日本が好きでお金もあるのに行くことのできなかった人々が殺到することになった。「高嶺の花が一気に身近な存在になった」というタイ人女子の声を今でも覚えている。
中には、年に2度も3度も日本に訪れる人もいる。まして、「安近短」となる台湾からの観光客からすれば、もはやゴールデンルート的な旅行に食指が動かないのも当然だ。台湾からの訪日客の9割弱をリピーターが占めている。タイ、シンガポールでも8割弱、マレーシア、インドネシアに至っても約半数がリピーターだ。
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