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20年前の3倍「家で看取る」医療を選んだ妻の想い 最期は自宅で…「在宅医療」の中身と費用を解説

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時10分

江戸川区の松村さん(80代・女性)もその1人。正確には、「待っていた」1人だ。

松村さんの夫は脳腫瘍を患い、80歳で亡くなるまでの約2年間、在宅医療を利用した。病院から退院するタイミングで、松村さんが「駅の看板で見かけ、『ここだ!』と思った」のが、しろひげ在宅診療所だった。

「排泄・排便の介助も、たとえ本人が暴れても、落ち着いて、嫌な顔ひとつ見せずにやってくれた。何より、医師も、看護師さんもゆったりと構え、夫を1人の人間として見てくれました。本人も、最期まで人間らしく生きることができたと思います」(松村さん)

「あの経験があるからこそ、今も心穏やかでいられる」と言う。

痛み・不安を取り除くことも

在宅医療は月に2回、定期的に訪問するのが標準のシステム。診療の内容は患者の状態などによって異なるが、問診したり、聴診器をあてたり、血圧を測ったりする。

また、薬の処方や点滴、人工呼吸器や胃ろう(胃に小さな穴を開けて、チューブで栄養剤を入れる方法)の管理、寝たきりで生じやすい褥瘡(じょくそう:床ずれ)の処置なども行われており、病院でのそれとあまり変わらない。

約20年前から在宅医療に取り組み、1都3県と愛知、鹿児島、沖縄に計24拠点の在宅診療所を構える悠翔会の理事長・診療部長、佐々木淳さんは、「“在宅では病院よりできることが少ないので、病院にいたほうが安心”と思うかもしれませんが、在宅でできる範囲が広がっています」と話す。

例えば、今は持ち運びができるコンパクトな画像検査の機器もあるので、それを活用すれば、ある程度の検査は可能だ。

山中さんも、「手術や大がかりなCT、MRIの検査はできませんが、それ以外は病院と同じことができます」と言う。

特に重視しているのは、がんなどの末期で起こる痛み、息苦しさ、不安への対策だ。今の在宅医療では、きちんとした管理下であれば、自宅にいながらモルヒネなどの医療用麻薬を使うことが可能になっている。

「患者さんやご家族には、『苦痛は100%取れます』とお話ししています。むしろ、安心できる自宅にいることで気持ちが落ち着くのか、自宅に戻るだけで、“痛みが和らいだ”とおっしゃるがん患者さんも少なくありません」(山中さん)

この「安心感」は重要なキーワードのようだ。初めての在宅医療で夫を看取った松村さんは、夜間に心配なことがあって診療所に電話をすると、いつも包み込まれるような感じを受けたと語る。

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