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20年前の3倍「家で看取る」医療を選んだ妻の想い 最期は自宅で…「在宅医療」の中身と費用を解説

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時10分

夫は、膵がんを患う前に脳卒中を発症しており、その後遺症のため歩けなかった。そのため、しろひげ在宅診療所を利用していた。

Nさんはフルタイムの仕事を続けながら、夫を在宅でみていて、多忙な毎日を送っていた。具体的には、朝は6時に起床。夫のケア(胃ろうへの栄養剤注入、トイレの介助、洗顔や歯磨きなど)をして、デイサービスに送り出す――という具合だ。同時にNさんも出勤する。

夫がデイサービスから帰宅する時間は、Nさんが帰宅する時間より早い。そのため、ヘルパーに出迎えてもらっていた。Nさんが帰宅するのは夕方6時半過ぎで、そこから再び夫のケアをする。デイサービスで使った着替えやバスタオルの洗濯をすませ、寝るのは深夜1時になる。

そんななかでも、Nさんは在宅医の訪問日には仕事をやりくりして家にいるようにした。

訪問看護に立ち会うことはなかなかできなかったが、「(医療スタッフからの)連絡ノートに詳細に様子が書かれていて、今日あったことがよくわかりました。こちらが困っていることを書いておくとコメントがあり、そばに医療者がいるような安心感がありました」(Nさん)という。

夫にがんが見つかったのは、そんななかだった。

「お腹の調子が悪く、やせてきたんです。痛そうに顔をゆがめるのですが、(脳卒中の後遺症で)口がきけないから、どこが痛いかもわかりませんでした」(Nさん)

主治医が診療で異常を察知し、病院を紹介。検査の結果、膵がんと診断された。それからの月日は短かったが、自宅で「悔いのない介護ができた」とNさんは語る。

山中さんは、在宅医療で欠かせないのは医療以外の環境を整えること、特に介護職との連携が重要だと考えている。「本人が動ける時期から医療・介護サービスが入ると、結果として家で看取ることができるケースが多い」と言う。

家族がいなければ在宅医療を受けられない、というものでもない。

実際、しろひげ在宅診療所が診ている患者の2割ほどが、独居だ。山中さんは「独居で認知症の人でも、経済的に困難を抱える人でも、地域の医療・介護サービスが整っていれば、在宅で治療を続けることは可能」と断言する。

在宅医療はどうやって受ければいいか

在宅医療は、24時間体制などの要件を満たす「在宅療養支援診療所」というところが主に行っている。

希望する場合は、本人が入院中なら病院の「医療相談室」「地域連携室」のような部署に相談するとよい。自治体にある「地域包括支援センター」などでも診療所の情報が入手できる。

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