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20年前の3倍「家で看取る」医療を選んだ妻の想い 最期は自宅で…「在宅医療」の中身と費用を解説

東洋経済オンライン / 2025年1月15日 8時10分

「話すトーン、スピードが落ち着いているんです。こちらが伝えたいことが伝わって、どうすればいいかがわかった瞬間、本当に気持ちが楽になるんです」(松村さん)

1カ月の自己負担の目安は

在宅でできることや、メリットなどについては何となくわかったが、どれくらいお金がかかるのかについて、不安だという声もあるだろう。

在宅医療は公的医療保険で利用できる。費用は患者の病状や診療内容などによって細かく決まっているが、1割負担なら計画的な月2回の定期訪問で月6500~8500円が目安。このなかに基本的な診察や傷の処置、痰の吸引といった医療行為の費用が含まれている。

患者・家族側の求めで医師が臨時に訪問する“往診”の場合は、往診料が別途かかり、1回720円(1割負担の場合)を基本に、時間帯などに応じて加算される。また、インフルエンザの予防接種など、保険が利かないものは患者の実費となる。

先に挙げた医療行為に含まれない治療や、往診の回数が積み重なって、1カ月の医療費が高額になった場合、一定額を超えたぶんが払い戻される「高額療養費制度」が使える。70歳以上で年収156万~約370万円なら、自己負担の上限は月1万8000円となる(関連記事:高額化するがん治療「高額療養費」でいくら戻る?)。

さらに、訪問看護や訪問介護には、別の費用体系がある。

訪問看護は「介護保険」または「公的医療保険」、訪問介護は「介護保険」で利用できる。

これらも地域やサービスを受ける人の状態、内容によって異なるが、日常生活のほぼすべてに介助が必要な人は、最大で月40万円程度(1割負担なら4万円くらい)の看護・介護のサービスを介護保険で利用できる。具体的には、1日2回の訪問介護と週2回の訪問看護、週2回のデイサービス(通所型の介護サービス)だ。

本人の状態や、治療の内容にもよるので一概に比較できないが、入院した場合の自己負担費用が1日平均約2万円(生命保険文化センターの2022年度調査)であることを考えると、概ね入院より安くすむといえるだろう。

何より「自分の家という、ご自身の選択が尊重される場所で過ごすことは、特に残された時間が限られるがん患者さんにとって、重要です」(前出・佐々木さん)。

仕事をしながら膵がんの夫を看取る

江戸川区のNさん(50代)は、膵がんの夫(享年59)を自宅で看取った。

夫は温厚な人柄で、「ガハハ」とよく笑う人だった。Nさんも明るい人で、「在宅医療は初めてでしたが、できる限りのことをして、私と娘で笑顔で送り出そうと決めました。『しろひげ』の皆さんに守られて、貫くことができました」と話してくれた。

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