「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向
東洋経済オンライン / 2025年2月3日 15時30分
トランプ氏が再びアメリカ合衆国大統領に就任した。この意味とは何か。日本がとるべき対応、そして今後の世界のありようはどうなるのか。『科学と資本主義の未来──〈せめぎ合いの時代〉を超えて』著者の広井良典氏が読み解く。
トランプ政権の意味するもの
トランプが再びアメリカ大統領に就任した。これを受けて日本でも、トランプ政権の再始動がもつ意味について、関税引き上げ、移民の強制送還、「多様性」への規制等々に関してさまざまな論評がなされているが、これらの多くは個別の話題についての表層的な議論にとどまり、トランプ現象のもつ本質的な意味からは遠い内容にとどまっている。
ここでは私が2023年に公刊した著書『科学と資本主義の未来』で提示した視座も踏まえながら、トランプ再選の意味と日本がとるべき対応、今後の世界のありようについて幅広い角度から考えてみたい。
最初に指摘したいのは、トランプ政権とは、アメリカという国ないし社会の実質的な理念や価値観をストレートに体現する存在であるという点だ。ここでいうアメリカの理念や価値観とは、
①市場主義(ないし小さな政府)
②限りない拡大・成長志向
③環境・福祉への無関心
④「強さ(パワー)」への信仰
といったベクトルに集約される思考様式を指している。
このうち①の「市場主義(ないし小さな政府)」はあらためて確認するまでもない点かと思うが、イーロン・マスクやIT関係者をはじめとするビジネス系人材を周辺に置き、また“政府効率化省(DOGE: Department of Government Efficiency)”を設けて公的部門の縮小を進めるといった動きに端的に現れている。
これと②の「限りない拡大・成長志向」が結びつくと、それは私が上記の著書で論じた「資本主義」の定義そのもの(=市場経済プラス限りない拡大・成長)となり、つまり市場をドライブ(駆動力)にして利潤の極大化を目指すという行動や社会のありようが帰結する。
そこでは自ずと経済(エコノミー)が最優先事項となり、③で挙げるような「環境」や「福祉(富の再分配を通じた格差是正)」といった関心は隅に置かれるか完全に視野からはずれることになる。気候変動に関するパリ協定からの離脱をトランプが早々と宣言し、石油等の採掘に関する規制を撤廃する方針を示しつつ、選挙キャンペーン中の演説で“Drill, baby, drill”(もっと掘れ、掘れ)とのフレーズを繰り返していたのもこうした方向に関するものだ。
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