「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向
東洋経済オンライン / 2025年2月3日 15時30分
そしてこれらの根底にあるのは、④の「『強さ(パワー)』への信仰」と言えるだろう。私は1980年代末と2001-02年と3年間アメリカに滞在したが、政治、経済、社会、文化や芸術等あらゆる領域を通じてアメリカ社会の根底にあるのがこの「『強さ(パワー)』への信仰」であることを痛感した。
「力」にはその物理的行使あるいは暴力も含まれる。トランプに関して言えば、前回の大統領選で敗れた際の議事堂襲撃事件もそうだし、銃規制への反対も同様である。
そしてこれら①~④を通じて、「トランプ政権とは、アメリカという国ないし社会の実質的な理念や価値観をストレートに体現する存在」ということを先ほど述べた。
アメリカ社会の“分断”ということがしばしば論じられるように、アメリカには強い「反トランプ」勢力が存在することは事実であり、それは民主党支持層であったり他のグループだったりする。
しかしそうした層を含めて、アメリカという国ないし社会が全体として、あるいは他の先進諸国(とりわけヨーロッパ)との比較において、①~④の志向がきわめて強い社会であることは確かであり――それは社会保障システムのあり方や環境政策、経済格差の大きさ等に如実に示されている――、こうした意味において、トランプ政権はもっとも「アメリカらしい」思考様式をもった、あるいはアメリカという社会の特質をもっとも“純粋”に反映した政権と言えるのである。
「アメリカ信仰」からの脱却
以上の点を踏まえて私がまず主張したいのは、日本あるいは日本人の中になお残る、“アメリカはすばらしい国である”といった認識――「アメリカ信仰」と呼びうる思考回路――からそろそろ卒業すべきという点だ。
いま「なお残る」という表現を使ったのは次のような趣旨からである。
すなわち第2次世界大戦後の日本はアメリカの占領下から出発し、その後の経済発展を遂げてきたという歴史的経緯や、20世紀という時代においてアメリカという国が世界における覇権国家でもあったことから、特に高度成長期を生き抜いてきた世代――いわゆる団塊世代がその典型――を中心に、とにかくアメリカという国は(その物質的な“豊かさ”に象徴されるように)理想的な国であり、また日本にとっての「モデル」となる国であるという意識や感覚が深く日本人の意識の中に浸み込んでいった。
「平均寿命」に関する事実
ここであえて個人的な述懐を世代論的な視点とともに述べるならば、私は就職した頃(1980年代半ば)に“新人類”と呼ばれた世代に属するが、私前後より若い世代になってくると、団塊の世代など上の世代にきわめて顕著だった「アメリカ(ないし欧米)ー日本-アジア」という強固な“序列意識”――アメリカがもっとも“進んだ”国であり、日本はそれに近づきつつあり、韓国や中国など他のアジア諸国ははるかに“遅れた”国であるといった認識――は徐々に薄まり、もう少しフラットで中立的な認識が広がっていったと言えるだろう。
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