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「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向

東洋経済オンライン / 2025年2月3日 15時30分

私自身に関して言えば、先ほどもふれた3年間の滞在経験から、アメリカにおける尋常ではない格差や貧困、都市の中心部の荒廃、頻発する暴力や犯罪、人々の不安やストレス、公的医療保険などの社会システムの不備等々を目の当たりにし、アメリカが“すばらしい国”ないし“モデル”とはおよそ程遠い国であり、むしろ多くの面において深い「病理」を抱えた国あるいは社会であることを強く感じてきた。

しかし以上のような点を踏まえてなお、全体として見るならば、日本あるいは日本人の間に「アメリカ信仰」的な認識や感覚が残っているのは確かなことだろう。

ここで、先ほど述べた「アメリカが“すばらしい国”ないし“モデル”とはおよそ程遠い国である」という点を示す一例を挙げてみよう。それはアメリカないしアメリカ人の「平均寿命」に関する事実である。

多くの人々にとっては意外な点かと思われるが、健康に関する基本的な指標である平均寿命を見た場合、アメリカのそれは78.5歳で、先進諸国の中でもっとも短く、世界全体の中でも40位で、これはチリ(80.7歳、31位)やペルー(79.9歳、32位)、コロンビア(79.3歳、34位)等よりも低い水準なのである(WHO, World Health Statistics 2022)。

もちろん寿命の長短ということが社会の良し悪しを判断する絶対的な基準とは言えないが、ある国ないし社会、あるいはそこでの人々の豊かさや「生活の質」を評価する際の、重要度の高い指標の1つであることは確かだろう。

そしてアメリカという、もっとも「豊か」と思われている国において、人々の平均寿命が相当低いという事実は、アメリカという国ないし社会のもつ病理や矛盾を象徴的に示していると私には思えるのである。その背景には格差や貧困、暴力、公的医療保険の未整備といった主に低所得層に関わる問題のみならず、強い競争圧力やストレス、不安等から帰結するさまざまな心身の不調や疾患という、高所得層までを含む要因が働いている(リチャード・ウィルキンソン他『格差は心を壊す』東洋経済新報社参照)。

こうした点を含め、トランプ政権が再び発足した今こそ、アメリカという国ないし社会のもつ問題性を日本はもっと認識し、上記のような「アメリカ信仰」的な意識・価値観から脱却あるいは卒業していくべきものと私は考える。

なぜなら先ほど指摘したように、トランプ政権とは「アメリカ」という社会の特質をもっとも“純粋”に反映した政権と言えるからである。

アメリカとの関係性を相対化する

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