「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向
東洋経済オンライン / 2025年2月3日 15時30分
一般に、およそ社会というものは「市場-政府(公的部門)-コミュニニティ」(あるいは「私-公-共」)という3者の適切な組み合わせないしバランスで成り立っていくべきものと考えられるが、このうち圧倒的に「市場」を重視するのが資本主義というシステムである。
これに対し、「市場」ではなくむしろ「政府」に軸足を置いて社会をつくっていこうとするのが他でもなく「社会主義」の理念だった。
そして資本主義の理念ないし思想が実質的に生まれたのが17~18世紀のヨーロッパだったとすれば――その一つの象徴は思想家マンデヴィルの著作『蜂の寓話』であり、マンデヴィルはこの中で「私利の追求」こそが社会全体を豊かにすると論じた――、それに対するアンチテーゼとして19世紀のヨーロッパで生まれたのが社会主義の思想だったわけである。
このように記していくと、慧眼の読者はお気づきのとおり、その社会主義の理念を現実の社会システムとして初めて実現させたのが(ヨーロッパないし近代化における“後発地域”たる)ロシアだった。一方アメリカは別の意味でヨーロッパに対する後発国家と言える。
つまり端的に言えば、「ヨーロッパで生まれた資本主義および社会主義という思想を、それぞれ極端な(あるいは“純粋”な)形で実現させたのが、アメリカそしてロシアという後発国家だった」という理解が成り立つし、現にそうだったのである(このことは先ほど言及した拙著『脱「ア」入欧』でも述べた)。
そしてそうした「極端」な2つの国家あるいは社会が、(その広大な国土や資源・エネルギー、ひいては軍事力という「力」を背景に)“巨大”な存在になっていったのが20世紀であり、両者の「対立」が世界の基軸となったのがまさに「冷戦」という、20世紀後半の構造だった。それはすなわち、
●アメリカ = 市場主義プラス限りない拡大・成長
●ロシア(ソ連)= 計画経済プラス限りない拡大・成長
という対立だったと理解できる。
構造的に破綻を免れないシステム
現在はどうか。たしかに表面上はソ連は崩壊し社会主義は撤退したようにも映る。
が、それは実質的に国家主導の独裁的システムという形で存続しているのであり、この意味において、実は冷戦構造は今もなお続いていると見ることができる。ウクライナをめぐる状況もこうした文脈でとらえるべきだろう。
さらに「グローバル・サウス」という“南北”の軸が現在加わっているわけだが、これは(冷戦時代に)「第三世界」という理念が唱えられていた構造と通じるだろう。
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