「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向
東洋経済オンライン / 2025年2月3日 15時30分
そして私が見るところ、問題の根源は、以上に述べてきたような「純粋な資本主義」(アメリカ)と「純粋な社会主義」(その変質としての権威主義的独裁)(ロシア)のいずれもが、それぞれ「市場」そして「政府」という、社会全体の構成要素――先ほど指摘した「市場-政府-コミュニニティ」――の一部のみを肥大化させた、きわめて「いびつ」な社会システムであるという点だ。
この意味において、トランプのアメリカも、プーチンのロシアも、(その中身は対照的でありつつ)いずれも構造的に破綻を免れないシステムなのである。私たちが今後数年において、目にするのは、そうした事態の展開ではないか。
採られるべきは、ここで述べている「市場-政府(公的部門)-コミュニニティ」の3者、あるいは「経済(効率性)-福祉(公平性)-環境(持続可能性)」のいずれをも重視した、私が「持続可能な福祉社会(sustainable welfare society)」と呼んできた社会の構想と実現であり、ドイツや北欧などヨーロッパの一部では徐々に実現されつつある。
先ほどから述べている「純粋な資本主義」「純粋な社会主義」との対比で言えば、それは「資本主義・社会主義・エコロジー」――あるいは市場・政府・コミュニティ――が融合ないしクロス・オーバーした社会像と言え、私自身はこれからの社会の姿は、地球社会の有限性という状況において必然的にこうした方向に収束していくと考えている。
グローバル化の「先」にある2つの道
最後に、「グローバリゼーション」というテーマとの関連について述べておこう。ここで私が指摘したいのは、「グローバル化の終わりの始まり」という視点だ。
冒頭にもふれたように、トランプ政権は各国に対する関税引き上げや移民規制の強化を掲げ進めつつある。この背後にあるのはもちろん(白人中心の)「アメリカ・ファースト」の理念であり、それ自体は“反グローリズム”的な考えに基づくものと言える。こうした展開を私たちは大きな文脈においてどのように理解すればよいのか。
ここで手がかりになるのは、数年前に実施に移されたいわゆる「ブレグジット(Brexit)」、すなわちイギリスのEU離脱をめぐる動きである。そしてここで浮かび上がるのが先ほど指摘した「グローバル化の終わりの始まり」という視点なのだ。
あらためて言うまでもなく、私たちが現在言うような意味での「グローバリゼーション」を最初に本格化させたのはイギリスである。
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