3000km以上も移動! 海や大陸を渡るチョウやトンボを知ってる?
ウェザーニュース / 2023年10月1日 6時57分
毎年決まった時季に繁殖地と遠く離れた越冬地との間を定期的に往復する鳥を「渡り鳥」といいます。ハクチョウ、ユリカモメ、ツバメ、カッコウなどは渡り鳥です。
「渡り」を辞書で調べると、幾つかある意味の一つに「鳥などの動物が季節によって生息地を変えること」といったことが書かれているものもあります。「鳥などの動物」であれば、鳥に限らないことになりますね。
渡りをする鳥以外の動物とは、どんな動物でしょうか。意外なことに、昆虫のチョウやトンボの中にも、渡りをするものがいるのです。
どんなチョウやトンボが、どこを、どのように、渡っていくのでしょうか。
1日に300kmも飛行する「オオカバマダラ」
オオカバマダラとアサギマダラは渡りをするチョウとして知られています。
オオカバマダラは北アメリカ大陸に棲(す)む、「王様蝶(おうさまちょう)」とも呼ばれるチョウです。
オオカバマダラは春から夏の間はアメリカの北部やカナダで過ごし、9月中旬ごろになると、集団で南下して、メキシコなどにある越冬地に向かいます。
そして、春になると、また北上していきます。
ただし、南下は1世代で行われますが、北上は3世代から4世代にかけて行われると考えられています。
オオカバマダラの移動距離は、なんと3000km以上に及びます。5000km移動すると見る専門家もいます。南下するときは、1日に300kmも飛ぶことがあるというから、驚かされます。
東京都心から名古屋市までは、直線距離で約260kmなので、それよりも長い距離をオオカバマダラは1日で移動するということです。
身近で見るモンシロチョウなどの姿を思い浮かべると、にわかには信じられない人もいるかもしれません。
南方から日本に飛んでくる「アサギマダラ」
アサギマダラはオオカバマダラと同じマダラチョウの仲間です。日本では、南西諸島から北海道の南部まで見られ、台湾などから飛来してくることが確認されています。
今のところ、アサギマダラは、季節によって長距離移動をする日本で唯一の「渡り蝶」といわれます。春は南から北へ、秋は北から南へと移動します。
和歌山から高知を経由して香港まで移動したアサギマダラも確認されています。その距離、約2500kmというから、アサギマダラもオオカバマダラに負けないほどの“長距離フライヤー”と言ってよいでしょう。
アサギマダラはどこで見ることができるのでしょうか。
たとえば、三重県津市の美杉町では、10月上旬から11月上旬にアサギマダラが飛来することが多いようです。アサギマダラが好きなフジバカマ(キク科の多年草)の花畑の蜜がお目当てです。
アサギマダラは山形市のフジバカマ園地などでも確認されています。
目の前にいるチョウが、台湾から海を渡って来たのかと思うと、感慨深いですね。
海面に止まって休むこともある「ウスバキトンボ」
チョウだけではありません。渡りをするトンボも確認されています。
それはウスバキトンボで、世界で最も分布域の広いトンボといわれ、日本の各地でも見ることができます。
春から初夏に、南方から沖縄などに飛来して、九州、中国地方……と、少しずつ北上していきます。
ウスバキトンボは海を渡る際、夜間に海面に止まって休息することもあるといいます。
海を渡るトンボがいて、しかも、海面で休むこともあるとは、これにも、やはり驚かされます。
やっと少しずつ秋らしくなってきました。
この秋、地域によっては、アサギマダラやウスバキトンボを見られることもあるでしょう。
見かけた際は「どこから、どれくらい飛んできたんだろう?」と思いつつ、眺めてみるのも楽しそうです。
参考資料など
『昆虫の生態図鑑 大自然のふしぎ 増補改訂』(監修/岡島秀治、発行所/学研教育出版)、『日本の昆虫生態図鑑』(著者/今井初太郎、発行所/メイツ出版)、東京大学総合研究博物館「太陽系から人類、そして文明へ B25 アサギマダラとオオカバマダラ」(https://www.um.u-tokyo.ac.jp/UMUTopenlab/library/b_25.html)、津市「海を渡る蝶『アサギマダラ』観賞地情報」(https://www.info.city.tsu.mie.jp/www/contents/1507704269890/index.html)、Webナショジオ「動物大図鑑 オオカバマダラ」(https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20141218/429075/)、赤城自然園「渡り蝶“アサギマダラ”情報」(https://akagishizenen.jp/asagimadara/)、公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会「ウスバキトンボの渡り」(https://www.jataff.or.jp/konchu/mushi/mushi103.htm)
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