サウジアラビアは遠い…/原ゆみこのマドリッド
超ワールドサッカー / 2025年1月11日 22時0分
「今年も決勝はクラシコなのね」そんな風に私がちょっとマンネリに感じていたのは金曜日、スペイン・スーパーカップ準決勝で大方の予想通り、リーガのビッグ2が快勝。日曜午後8時(日本時間翌午前4時)にキング・アブドッゥラーでタイトルを懸けて戦うのが、バルサとレアル・マドリーに決まった翌朝のことでした。いやあ、例年のことではありますが、どんなにひいきのチームでもサウジアラビアまでスペインから応援に行くファンは極々少数。おかげで火曜のアスレティックvsバルサの準決勝など、スタンドに空席がかなりあったぐらいなんですけどね。
それでも翌日は地元のマドリーファンで大入りとなり、いえ、選手の家族中心のマジョルカ応援団など、100人にも満たない小グループだったせいもあったか、奥様方の中にはアラブ人男性に囲まれて、セクハラ被害に遭った気の毒な人もいたようなんですけどね。昨今は4チームでの大会になったとはいえ、現地の人の望むのはクラシコ(伝統の一戦)オンリー。2023年は3-1でバルサが優勝、昨年は4-1でマドリーが優勝と結果が拮抗しているだけに、いよいよ今年は雌雄を決する対戦になるはずですが、どうにもきな臭さが漂っているのはやっぱり、例の件があるせいで…。
そう、実は昨年中からバルサのダニ・オルモとパウ・ビクトルの選手登録が、クラブがサラリーキャップを満たす金策をしてリーガに認められない限り、12月末で抹消に。その後、新たに今季の登録はできないという問題は一応、報道は追ってはいたものの、私にしてみれば、ヨソ様の話ですからね。結局、年末までに解決せず、リーガにもサッカー協会にも見放され、バルサは登録選手でなくなった2人を年明け最初のコパ・デル・レイ32強対決でも使えなかったんですが、何とダメ元で連れて行ったジェッダに上訴していたCSD(スポーツ上級委員会)のウルトラCが届くとは!
アスレティックとの準決勝が始まる数時間前、リーガの登録抹消にCautelarisima(カルテラリシマ/ウルトラ一時停止命令)が下され、うーん、さすがにその試合に2人は出場しなかったんですけどね。バルベルデ監督のチームに前半17分のガビのゴール、そして後半7分、12月にレガネスに負けた試合で負ったケガから回復したジャマルの一発で、相手のゴールが2度もオフサイドで認められなかったのもあり、バルサは0-2で勝利。決勝ではオルモもパウ・ビクトルも胸を張ってプレーできるとなれば、リーガの全てのクラブから喧々囂々の非難を浴びていたのも当然だった?
それも実際、CSDが結論を出すまでの3カ月間、有効となる停止命令を出した理由というのも怪しげで、リーガと協会の協約に一貫性が不足。2人をスペイン・スーパーカップで使えないせいで、バルサが負ければ、先々、クラブW杯の参加資格に影響したり、更にはオルモがプレーできないと、スペイン代表にも害が及ぶといった、ほとんど世間が納得できないものでしたからね。扱いが不公平という抗議が各所から湧くのもさもありなんですが、これで最後はやっぱり、オルモは今季残りの登録ができないとなったら、当人も貴重な1月の移籍機会を逃すことになるのではないかと。
まあ、そんなことはともかく、木曜のマドリーの準決勝がどうだったかをお伝えしてくことにすると。実はリーガの公平性に関してはこちらも少々、不透明なところがあって、年明け最初に行われたマドリーの順延分、バレンシア戦でレッドカードをもらったビニシウスが2試合連続退場だったにも関わらず、出場停止処分はたったの2試合だけ。さすがにこれは甘いんじゃないかという意見はあったものの、おかげでスペイン・スーパーカップには影響しなかったんですが、アンチェロッティ監督のチームはマジョルカ戦の当日、モドリッチが風邪でお休みという逆境に見舞われることに。
といっても前半の彼らがパッとしなかったのは別にそのせいではなく、ええ、マドリーがスロースターターなのはよくあることですからね。むしろ、昨年もオサスナを率いてこの大会に出場し、準決勝でバルサに負けたアラサーテ監督が、折しも先日は今季のコパ32強対決でもう敗退。それだけにこの一戦に全精力を投入せざるを得なくなったせいもあり、しっかり守られてしまったため、0-0で折り返すことに。
おまけに後半9分にはチュアメニがケガして、急遽、アセンシオとCBを代わるというアクシデントもあったマドリーですが、大丈夫。とうとう18分には突破口を開き、うーん、ビニシウスの折り返しをヘッドしたロドリゴはゴールバーに弾かれてしまったんですけどね。更にこぼれ球を撃ったエムバペもGKグライフにparadon(パラドン/スーパーセーブ)されてしまったものの、最後はベリンガムが決めて、前線4人総動員で先制点を挙げることに成功します。
ただその後はなかなか追加点が取れず、ええ、マジョルカも浅野拓磨選手を始め、サム・コスタ、ロベルト・ナバーロの3人を一気に投入し、決して勝負を捨てませんでしたしね。アブドン・プラッツも入った終盤は少々ハラハラさせられたんですが、そんな中、ベリンガムのゴールの直後、「Te vas a casa, te vas a casa/テ・バス・ア・カサ(お前らは家に帰る)」と嘲ったりもして、残り3分にはでマッフェオと一気触発になっていたビニシウスをブライムに代えたのは、アンチェロッティ監督の大英断だった?というのもロスタイム3分にはそのブライムのシュートをバリエントがカットし損ねて、オウンゴールにしてくれたからで、これで2-0としたマドリーはほぼ、勝利を確実なものに。
さすがにそれにはマジョルカも力が抜けたか、50分にはルーカス・バスケスのクロスをロドリゴがゴール前からvolea(ボレア/ボレーシュート)で決めて、とうとうスコアが3-0となったから、もう安心です。うーん、その直後、ベリンガムがマッフェオに何か言ったことから、両チームのtangana(タンガナ/小競り合い)が始まり、そのまま試合はうやむやのまま終了に。加えてマッフェオに「Tira para allá, que eres muy malo/ティラパラアジャー、ケエrス・ムイ・マロ(そこで倒れてればいい。超下手くそ)」と言い返した、怖い物知らずのカンテラーノ(RMカスティージャの選手)、アセンシオがマジョルカの選手に囲まれてしまうなんてこともあったんですが、いやいや、サウジアラビアくんだりまで行って、喧嘩してどうする?
最後はマッフェオを宥めながら、ロッカールームに戻ったアンチェロッティ監督によると、「Estaban un poco calientes con lo que ha pasado en el partido/エスタバン・ウン・ポコ・カリエンテス・コン・ロ・ケ・ア・パサードー・エン・エル・パルティードー(試合であったことのせいでちょっと皆、熱くなっていた)」そうなんですけどね。マドリーが試合にケリをつけるのに時間がかかったのには、スペインでの真冬の試合と違い、現地が暑かったせいでの疲れも挙げていましたが、そうなるとやっぱり、決勝まで中1日多いバルサが有利かも。昨年10月のリーガ・クラシコでは、まさに絶好調期だった相手に0-4とホームで惨敗していたマドリーですが、ここ2カ月でかなり状況の変わった現在、果たしてスペイン・スーパーカップでリベンジ優勝はできるのでしょうか。
え、それで他のマドリッド勢はこの週末、何があるのかって?もちろん、スペイン・スーパーカップに関係ない16チームにはシーズン前半戦最後となるリーガ19節があって、早くも金曜には弟分のラージョがセルタをエスタディオ・バジェカスに迎えることに。こちらは勝ち点2差で12位と11位の対決ということで、かなり競った戦いが展開されそうですが、どちらもコパでも生き残っているとあって、ええ、早くも来週には16強対決がミッドウィークにありますからね。
木曜にラージョがレアル・ソシエダとサン・セバスティアン(スペイン北部のビーチリゾート都市)で対戦となる脇で、セルタも同日、こちらはサンティアゴ・ベルナベウで”Pasillo de campeones/パシージョ・デ・カンペオネス(チャンピオンの花道)”を作って、スペイン・スーパーカップ王者を迎える破目になりかねず。その辺はともかく、ヒラルデス監督も年明けから連戦続きの相手の消耗度に付け込みたいところでしょうが、生憎、永遠のエース、イアゴ・アスパスが32強対決のラシン・サンタンデール戦で足に肉離れを起こし、1カ月の休場になってしまったのは痛かったかと。
何にせよ、どちらもリーガの降格圏からは距離があるため、この1週間はコパ準々決勝進出を目指して、選手たちの時間配分に気を使わないといけないんですが、逆にコパでは早くも年内の2回戦で敗退。今はリーガ一択になっている相手と対するのが、土曜にエスパニョール戦となるレガネスなんですよ。いえまあ、今季4年ぶりに1部再昇格した彼らの優先目標は残留であって、コパ16強対決まで進んだのはちょっとしたご褒美みたいなもの。よって来週水曜、2部首位のアルメリアに負けても全然、気にすることはないんですけどね。
なかなかハメス・ロドリゲスの退団が決まらないラージョとは違い、この木曜には期待した働きがまったくできなかったFWハラーとのレンタル契約を解消。ドルトムントにお引き取り願って、新たなゴール源を探しているボルハ・ヒメネス監督のチームですが、当面はオスカル・ロドリゲスも出場停止が続きますしね。今はミゲール・デ・ラ・フエンテやディエゴ・ガルシアらが1部での新境地を切り開いてくれることに期待するしかないかと。
そして残りの2チームは日曜のデーゲームとなり、まずはヘタフェがラス・パルマスと対戦するんですが、いいんだか悪いんだか、ボルダラス監督のチームは大きなジレンマに陥ってしまってねえ。というのも金曜のコパ16強抽選で最弱、唯一のRFEF2部(実質4部)のポンテベドラと当たってしまったからで、これは余裕で勝たないと恥ずかしい?ただ幸い、私も勘違いしたんですが、今季は新バージョンCLのおかげで、1月最後の2週間はコパは開催されず。CL出場チームだけがリーグフェーズの最終2節をミッドウィークにプレーするため、とりあえずは日程的には大丈夫なんですが、ヘタフェは降格圏まで勝ち点1という断崖絶壁にいる身ですからね。
となると、余分な大会はさっさとなくして、リーガに専念するべきなんですが、何にしても早めにゴール日照りを補うFWを獲らないことには始まらないかと。コパ32強対決グラナダ(2部)戦で決勝ゴールを挙げたボルハ・マジョラルの状態もまだ要注意ですし、候補に挙がっていたサディク(レアル・ソシエダ)も年明けにはバレンシアにレンタル移籍。もしや出戻りしてくれるのではないかと期待されたエネス・ウナル(ボーンマス)もこの木曜に再度のヒザの靭帯断裂に見舞われたとなれば、簡単には決まらなさそうですが、ファンのためにも近日中に朗報が入ってほしいものです。
続いて日曜午後4時15分(日本時間翌午前0時15分)から、メトロポリターノにオサスナを迎えるのがアトレティコで、そう、この試合はマドリーがバレンシアに順延試合で勝ったせいで、失った首位の座を取り戻す大チャンスであるだけでなく、クラブ史上最長の14連勝達成も懸かっている大事な一戦。ただまあ、先週末のコパ32強マルベジャ(RFEF1部/実質1部)戦以来、試合がなかったため、その準備もマハダオンダ(マドリッド近郊)でゆったり進められていたんですが、どうやらバルサとの年内最終戦で負傷したヒメネスの復帰はまだ先になるよう。
それ以外、昨季のアキレス腱断裂から、まだ通常モードに復帰できず、冬の移籍市場での放出も噂されているレマルを除き、負傷者はいないシメオネ監督のチームですから、別に支障はないんですが、コパ16強対決でも彼らはいい目が出てねえ。というのも来週水曜は残ったもう1つの2部チーム、エルチェとの対戦になったばかりでなく、やはりコパ生き残り組のオサスナはアスレティックと相まみえることに。近隣のライバル意識もあって、後者が熱い闘いになるのは目に見えているため、その分、リーガが疎かになる可能性もあるかと思いますが、この先4週間は週2試合ペースが続くアトレティコ。このクリスマス休暇で蓄えたエネルギーを今こそ、存分に発揮してくれるといいのですが…。
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