マニュアル子育ては見抜かれる! 大人の論理「あなたのため」は通じない【『みんなの学校』流「生き抜く力」の育て方 第3回】
Woman.excite / 2017年7月27日 6時0分
いまの学校教育が抱えた問題によって、学校に通えなくなってしまう子どもがいるという現実。そんな現実に、ごく普通の公立小学校が「不登校0」を実現して、世間に衝撃を与えました。その模様はドキュメンタリー映画『みんなの学校』で描かれ、現在でも自主上映会が全国で開催されています。
その学校の初代校長を務めた木村泰子先生。マニュアルを見ながら、子どもに関わろうとする大人を、子どもは信用しないといいきります。そんな中、子育て中のママの「あるある」ネタにも、木村先生は「ママがマニュアルで考えている」と、厳しい言葉がかけられました。
※本連載は、木村先生との「学びの会」を抜粋したものです。記事内に登場する参加者は、「学びの会」に出席した方々となります。
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■どうしてもマニュアルを探してしまう大人
木村:「子どもに関わるとき、『過保護や過干渉』なのか? それとも『教育』なのか?」がわからなくなってしまったとき。それは、「自分が大人として目の前にいる子どもに、どう関われば良いのか?」を迷っているときです。そういうとき、大人は、何かしらのマニュアルを見ながら判断しようとします。
大人がマニュアルを探しながら、「どっちかな?」といった態度で関わると、子どもは信用してくれません。マニュアルを見ないで、「目の前の子どもだけを見て関わろう」とする大人の態度は、子どもにもちゃんと伝わります。
もちろん、結果として「やっぱり、あなたに対して過保護、過干渉だった」と反省することもあるでしょう。でも、その反省は、すべて未来につながります。「あなたに対して過保護、過干渉だった。ごめんなさい」と、きちんと謝ることができる大人が、子どもは大好きです
■子どもの気持ちまでマニュアルで見ている
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木村:ここで大切なのは、子どもと関わるときに、「マニュアルを見ないで、目の前の子どもだけ見て関わろう」と自分で決めることです。
参加者:子どもは「イヤだ!」としか表現できないとしても、そこにある気持ち、モヤモヤしている気持ち、そういうものを、大人が感じてあげるということですか?
木村:それは、大人の嗜みですね。子どもに関わるときに、大切なのは「教えること」ではないんです。その子の心の中をわかろうと努力する。それが、大人の嗜みです。
参加者:たとえば、お友だちと一緒のとき、うちの子がわがままを言ったとします。「わが子の心の中をわかろうとする」という行為は、そのとき、その場で、お友だちがいる前でした方が良いのでしょうか? それとも家に帰ってきてから、ゆっくりした方が良いのでしょうか?
木村:そう考えてしまうこと自体、マニュアルを見ようとしているのかもしれませんね。
キツい言い方かもしれませんが、「みんなの中でやった方が良いのだろうか? それとも家に帰ってきてからの方が良いのだろうか?」と考えるのは、その子だけを見ていない行為です。その場、その場、その子、その子によって、状況はすべて違います。
■大人は、成功を狙って子どもに関わろうとする
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木村:「友だちの前で注意したことを後悔した」と思うことも、絶対あるでしょう。そんなことは、誰にでも絶対にある。でも、失敗したら、やり直せばいいんです(※)。
子どもに、「ごめんね、みんなの前で言わない方が良かったね」と言えば、子どもは「いーよ、別に」と言ってくれるかもしれない。けれども、「あなたが間違ったことをするのを、注意してあげたんだから!」という気持ちでいたら、子どもは、心を開くことはないでしょう。「絶対、もう俺の気持ちなんて言わない」と思います。
子どもが間違ったことをしたときに、大人は、「もう二度と失敗が起こらないためにどうしたらよいか?」を、自分(大人側の論理)で考えて「これが上手くいく方法よ」というものを提示しようとします。
でも、本当のところを言えば、親は、「(提示した方法が)成功する可能性なんて、100%ない」と思っておいた方が良いくらいの話なのです。
■「大人サイドの価値観」で物事を考えないようにするには
参加者:「100%ない」というのは、1%すらないってことですか?
木村:そうですね(笑)。「うまくいったら、めっけもん」くらいの気持ちで、子どもと関わるということです。そう思って、関わらないと、うまくいかなかったときの落ち込みも激しくなってしまう。大人に勝手に関わられて、勝手に落ち込まれていたら、子どもは、やっていられませんよね。
親も教員も、よっぽど気をつけていないと、常に「大人サイドの価値観」で考えてしまうものなのです。私も相当なダメ教員でしたが、子どもたちにズタズタに鍛えてもらったことで、随分と変えてもらいました。
子どもとの関わりを、大人サイドで考えない。これを実行できるようになるには、ある一定の訓練と、失敗経験が必要だと思います。
●大人が目の前の子どもをマニュアルで判断しようとすると、子どもにも伝わる
●大人も絶対間違う。でも間違ったときに謝る大人を子どもは大好きだ
●叱って二度とトラブルが起きないという「成功」を狙って子どもに関わっても、100%成功しない
●大人サイドの価値観で物事を考えないためには訓練が必要
次回は、「自分を表現すると嫌われる学校の現実。守りに入る教員をどう変える?」です。
『不登校ゼロ、モンスターペアレンツゼロの小学校が育てる 21世紀を生きる力』
木村 泰子,出口 汪/ 水王舎 ¥1,400(税別)
【木村泰子先生 『みんなの学校』流 親子関係のつくり方】
【木村泰子先生 ママのプロになる!】
(楢戸ひかる)
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