新規事業家・守屋実「新規事業で問われる経営者の覚悟」
財界オンライン / 2021年7月4日 7時0分
私は新規事業のプロとして仕事をさせてもらっています。そうしたなか、意外かもしれませんが、新型コロナウイルスの感染拡大以降、企業の規模を問わず、新規事業のご相談が増加しているのです。
「日本企業は変わらなければいけない」ということは、それこそ30年ほど前から言われてきたことですが、今回は切迫感が違うようにも感じます。また、コミュニケーションの多くがオンライン化する中で、日本企業の行動を制約してきた「ストッパー」のようなモノがようやく外れてきたのかもしれません。
これまでの日本企業は「このまま既存事業を続けていれば大丈夫」という考えが強かったと思います。
しかも、企業の規模が大きければ大きいほど、新規事業は既存事業の影響をモロに受けてきました。影響の出る既存部署からの反対の声などで、新規事業が中止に追い込まれてしまうこともあったわけです。
そうしたこともあり、ここ最近では「出島」のように別会社を立ち上げて、自由な発想で事業を進めさせるなど、既存事業の影響から構造的に隔離する仕組みを取り入れる大企業が増えています。
私自身、そうした「出島」に、現在いくつか参画させていただいているのですが、少人数でありながら、従来では考えられないくらいのスピードで他社との共創に取り組むことができています。
また、企業内の新規事業同様に、独立起業家の起業意欲も衰えていません。既存の仕組みにITを掛け合わせて勝負するというのが、スタートアップの勝ち筋の定石ですが、足元のオンライン化、デジタルコミュニケーションの進展は、まさに追い風だったりする訳です。
私が参画しているスタートアップでも、それまでの努力が前提ではあるものの、追い風の恩恵を被っているところがあります。例えば、前年同月比50倍の成長を示したところや、6カ月間のMRR(Monthly Recurring Revenue =月間経常収益)の伸びが800%というところがあるのです。
前者は新商品の発売に加え、コロナ禍によるおうちのなか消費の加速、後者は突破口足り得るサービスメニューの開発に加え、営業のオンライン化(効率化)が進んだことが急成長の要因となったのです。
一見、事業を立ち上げるには難しい環境に思える今ですが、だからこそ、粒が揃ったスタートアップが出てくる可能性が高いと見ています。景気のいい時であれば、勢いさえあれば、事新規事業で問われる経営者の覚悟業やキャッシュフローの見通しが甘くても社会に出てくることができたと思いますが、今はそれを許す環境ではありません。だから、こうした時に出てきた企業は生命力が強い可能性が高い、というわけです。
新規事業も、企業の立ち上げも、問われるのはトップの覚悟です。例えば大企業が次の柱を目指して立ち上げる新規事業であれば、その事業のリーダーは経営者自らであるべきです。なぜなら、第二の柱だからです。もし、そこに対してリソースを割けない、ということであるなら、それはそのまま、第二の柱の重要度はその程度である、ということになります。
時代の変化が激しく、これまでの延長線上にある未来ではない、新たな非連続を切り拓いていくことが求められています。意志を持って果敢に挑み、そして、切り拓いていく。失われた30年に決別し、新たな1年目を切り拓く時が、今であると信じています。
「コロナ危機を乗り越え、デジタル化の波を捉えよう」ユニコーンファーム・田所雅之CEO
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