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アングル:世界的な金利スティープ化、FOMC境に止まるか注目

ロイター / 2020年6月10日 9時12分

世界的なイールドカーブのスティープニング基調が続いている。景気拡大期待や国債増発懸念が要因だが、9─10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を機にストップがかかるがが当面の焦点だ。写真はワシントンの連邦準備理事会(FRB)。5月1日撮影(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

坂口茉莉子

[東京 9日 ロイター] - 世界的なイールドカーブのスティープニング基調が続いている。景気拡大期待や国債増発懸念が要因だが、9─10日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を機にストップがかかるがが当面の焦点だ。イールドカーブ・コントロール政策の導入が見送られたとしても、国債買い入れの継続方針が示されれば債券市場全体に安心感が広がるとみられている。

<景気回復織り込むベア・スティープ>

米国債の長短金利差が拡大している。6月5日時点の5年債と30年債の利回り較差は2016年12月以来の水準まで拡大した。

主因は2つ。国債増発懸念と景気拡大期待だ。当初は、大型財政支出による国債増発懸念が強かったが、ここにきて経済指標の改善がみられてきたことで、景気回復期待を織り込む方向に変化しつつある。

5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比250万9000人増と市場予想(800万人減)に反しプラスに転じるサプライズとなった。失業率は13.3%と、戦後最悪だった4月の14.7%から改善した。

モルガン・スタンレーMUFG証券のエクゼクティブディレクター、杉崎弘一氏は「景気回復トレンドにおいて、米連邦準備理事会(FRB)が手前のゾーンの金利を低水準で抑える一方、将来的な政策金利の上昇への期待から長いゾーンの金利が上昇する、ベア・スティープの構造に変化しつつある」と指摘する。

<FOMC前の疑心暗鬼>

市場の焦点は、こうしたベア・スティープの動きがFOMCをきっかけに落ち着いてくるかどうかだ。

9日から2日間の日程で開催されるFOMCでのイールドカーブ・コントロール(YCC、長短金利操作)の導入を予想する向きは少ない一方で、国債の買い入れは継続されるとの見方が多い。

米ニューヨーク連銀は5日、8─12日の米国債の買い入れ額を1日あたり40億ドル程度とし、前週から減らす方針を公表。金利が上昇している中での減額となったことから、市場の疑心暗鬼が強まっており、買い入れ継続なら安心感が広がる。

市場は今回のFOMCでは国債買い入れが継続されるとみているが、米10年債利回りが20─30ベーシスポイント(bp)上昇した場合は、増額される可能性があるとの見方が多い。これ以上の金利上昇の容認は金融引き締めとのメッセージと受け止められ、株価の下落やドル高の引き金になりかねないためだ。

一方、米金利が上昇すれば、為替ヘッジ後の米10年債利回りの水準が日本の20年債利回りを上回る可能性がある。日本の投資家による買いも入りやすくなるため、「ベア・スティープが長いトレンドになるとは考えにくい」と、アライアンス・バーンスタインの債券運用調査部長、駱正彦氏は指摘する。

<日銀の7月「オペ紙」に注目>

日本でも、超長期債主導での金利曲線のスティープ化が進んでいる。海外市場のベア・スティープの動きにつられていることもあるが、日銀のYCC政策も、その背景になっていると指摘されている。

日銀のYCCのターゲットは、短期の政策金利(マイナス0.1%)と10年金利(ゼロ%)の2つ。超長期金利はターゲットではない。日銀は7月からの国債増発に先んじて国債買い入れオペのオファー額を増やしてきたが、対象は中長期債で、超長期債は据え置きだった。

超長期債に対する「冷たい態度」に、市場で「超長期債金利はある程度、高い方が銀行や生保、年金などの運用を通じて実体経済にプラスとの考えを日銀は持ち続けているようだ」(外資系投信)との見方が強まったことも、スティープ化の一因となっている。

市場の焦点は、6月30日の夕方に公表される日銀の7月国債買い入れ方針だ。現時点では、超長期債の買い入れ増額は見送られる、もしくは小幅な増額との見方が優勢だが、「超長期金利の上昇が10年金利の水準に影響を及ぼすことがあれば、超長期国債の買い入れを増やす」(JPモルガン証券のチーフ債券ストラテジスト、山脇貴史氏)との見方も根強い。

一方、モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎氏は「日銀が将来的に利上げに踏み切るという見方は少ないこともあり、これ以上のスティープ化は難しいのではないか。また、過去を振り返ると、超長期債は一定の水準に達すると生保による買いが入り、金利上昇が止まる傾向にある」と話している。

(取材協力:伊賀大記 編集:田中志保)

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