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焦点:ガザ停戦決議で亀裂深まる米・イスラエル、「全面衝突」回避できるか

ロイター / 2024年3月26日 13時9分

 3月25日、 バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係は、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始以来、最も冷え込んでしまった。写真は2023年10月、テルアビブで会談する両首脳。代表撮影(2024年 ロイター)

Matt Spetalnick

[ワシントン 25日 ロイター] - バイデン米大統領とイスラエルのネタニヤフ首相の関係は、パレスチナ自治区ガザでの戦闘開始以来、最も冷え込んでしまった。

国連安全保障理事会で25日、ガザでの即時停戦を求める決議案が採択されるのを、米国が棄権という形で「容認」し、ネタニヤフ氏がこれを激しく非難したためだ。

ネタニヤフ氏は、イスラエル政府高官を今週ワシントンに派遣してガザ最南部ラファへの攻撃計画について協議を行う予定だったが、突然キャンセル。ガザで人道危機が急速に拡大する中で、何とかしてネタニヤフ氏に、パレスチナ市民にとって最後の比較的安全な地帯となったラファに攻撃する以外の選択肢を検討させたい米国側の取り組みは後退することになった。

ラファ攻撃をちらつかせるイスラエルの姿勢により、同国と米国の長年にわたる同盟は不安定化。ネタニヤフ氏がバイデン氏の要請を無視して攻撃に踏み切った場合、米国が軍事支援を制限する可能性も取りざたされつつある。

過去の米政権で中東地域の紛争調停を担当していたアーロン・デービッド・ミラー氏は「バイデン政権とネタニヤフ氏の信頼関係が崩れつつあることを物語っている。この危機を慎重に管理できなければ、状況は悪化するばかりになる」と警鐘を鳴らす。

国連の場ではイスラエルを擁護するという米国の伝統的な外交政策を守り続けてきたバイデン政権が今回棄権を決めた裏には、ネタニヤフ氏の振る舞いに対する米国の不満の蓄積が透けて見える。

11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏自身も、同盟諸国だけでなく、与党民主党内からもイスラム組織ハマスに対する軍事活動を続けるイスラエルを抑制することを求める声が強まっているという現実に直面している。

これに対してネタニヤフ氏は連立相手の極右をはじめとする国内各方面から、パレスチナ側に強硬姿勢を続けるよう突き上げられている。同氏は人質家族には解放に向けてできることは何でもすると約束しなければならない半面、辞任要求の抗議デモが頻繁に行われるなど政治基盤は決して強固ではない。

<バイデン氏の選択肢>

米国は、ガザで戦闘が始まってからこれまでずっと「停戦」という言い回しを使うのをできるだけ避け、国連ではイスラエルに不利な決議案に対して拒否権を行使し続けてきた。

ところがその間にガザでは飢餓が迫り、多くのパレスチナ市民が犠牲になる中で停戦を訴える国際世論も強まるばかりとなったことで、米国は今回の決議案の投票では棄権を選択した。

こうした中で複数の専門家は、当面の課題はバイデン氏とネタニヤフ氏が意見の隔たりを制御可能な範囲にとどめることになると指摘する。

戦略国際問題研究所(CSIS)の中東プログラムディレクター、ジョン・オルターマン氏は、両者の関係に「致命的な打撃」が加わったとみなすべき根拠はなく、対話の扉が全て閉ざされたとは思わないと話した。

ただ米国とイスラエルの間に何の懸案もなかった時期でさえ、互いに険悪になる場面があったバイデン氏とネタニヤフ氏の関係は、今回の米国の棄権で一層亀裂が深まっている。

バイデン氏は今月MSNBCのインタビューで、ラファ攻撃は「超えてはならない一線(レッドライン)」と明言。これに対しネタニヤフ氏は、そうしたバイデン氏の批判には耳を貸さず、ラファ攻撃を断行すると宣言した。

ネタニヤフ氏に対しては、民主党上院トップでユダヤ系のシューマー院内総務でさえ、和平への障害になっており、総選挙で代わりの指導者を選出すべきと苦言を呈し、バイデン氏はこれを「素晴らしい演説」と称賛している。

一方で共和党のジョンソン下院議長は20日、ネタニヤフ氏を米議会に招待して演説してもらうことを考えていると明かした。そうなるとネタニヤフ氏にバイデン政権への不平不満を表明する絶好の場を与えることとなり、バイデン氏にとって打撃になるとみられる。

民主党のホワイトハウス上院議員はロイターに、ネタニヤフ氏は共和党と手を組み、米国とイスラエルの関係を「武器化」して右派勢力に有利なよう情勢へと導こうとしていると述べた。

ただ再選を狙うバイデン氏が選択できる対応策は限られる。共和党に親イスラエルの有権者を取り込む機会を与えないようにしなければならない上に、強力なイスラエル寄りの姿勢に幻滅している民主党左派の支持がこれ以上減るのも阻止する必要があるからだ。

ネタニヤフ氏はと言えば、ガザでの戦闘継続には国内の幅広い支持があることを承知しているので、あえて危険を冒して米国の許容限度を試そうとしているように見える。

イスラエル戦時内閣の閣僚は全員、ハマスを壊滅させて人質が戻ってくるまで戦闘を続けることに賛成で、国際社会で孤立するリスクが高まっていても、米国の要求に応じて強硬姿勢を後退させる気配は乏しい。

極右派のスモトリッチ財務相は、イスラエルは米国のパートナーであって、米国に「庇護」されているわけではないと強調した。

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