ANA「ボーイング787-10国内線仕様」がついにデビュー! 座席の快適度は?
ASCII.jp / 2024年3月27日 7時30分
ANAは3月27日から、ボーイング787-10の国内線機材(旅客機)を羽田空港〜新千歳空港便のNH59便に投入します。すでに787-10の国際線仕様は2019年から使われていますが、国内線は初。デリバリーされたばかりの新しい飛行機ということで、プレス向けに事前お披露目会が開催されました。今回はこの新しいANAのボーイング787-10の魅力をチェックしていきます。
ボーイング787シリーズとは?
ボーイング787シリーズがANAに初導入されたのは2011年10月。約12年前と、干支が一巡するほど前の話ですが、ANAが世界で初めて787シリーズを導入したこともあり、当時のニュースなどでもかなり大きく取り上げられていました。記憶している人も多いのでは?
最初に導入されたのは「787-8」です。その後、胴体延長型の「787-9」を導入(定期運行便としてはこちらもANAが世界初)しており、ANAは世界で最も多く787シリーズを保有するエアラインです。今回の「787-10」はさらに胴体を延長したタイプで、全幅と全高は3機種とも同じですが、787-10の全長は11.6mも長くなっています。
●787シリーズのスペック比較(ANA国内線用機材)
(次ページ:座席数はどのくらい増えた?)
座席数はどのくらい増えた?
お披露目会は格納庫内で開催されましたが、間近でみるとかなりの大きさを感じます。座席数も大幅にアップ。787-10は787-8と比べて、94席も増えています。
●787シリーズの座席数比較(ANA国内線用機材)
今回導入された787-10は、初便の羽田〜新千歳のようにANAの路線の中でも利用者が多い高需要国内線に投入される予定です。現在ANAの高需要国内線では、同じくボーイングの大型機777-200ERが投入されていますが、今後は787-10へと置き換えていくとのこと。
というのも、787-10は777-200ERと比べて座席数は24席も多く、さらに約25%も燃費改善が見込まれるコスパの良い機材だからです。最近は燃料費の高騰もあり、航空会社は運賃設定がシビアになっています。そこに燃費が良く座席数の多い航空機を導入することで、運航コストを抑え得ることができ、運賃上昇も抑えることができるわけです。
これは、飛行機をよく使う旅好きにとっては実にありがたいポイントです。航空券が安く抑えられれば、旅行に行ける回数も増えますし、予約できる席数が多ければ「満席で買えない!」というケースも減りますからね。
787-10の客席は前述のとおり、プレミアムクラスと普通席の2クラス全429席。シート自体は、2019年に投入されたANA国内線仕様のボーイング777シリーズや、2021年投入の787-9国内線仕様と同じ系統を使用しています。
プレミアムクラスの座席幅はどう進化した?
プレミアムクラスシートは、15.6インチのパーソナルモニターがあり、座席幅は56cm(アームレスト内側のくぼみ部分を含む)と、どちらも国内最大クラス。電源やUSBポート(Type-A)もあり、大型のテーブルは回転式なので、パソコンやミールトレーを置いたままでも通路に出られます。
(次ページ:普通席の座席はどう進化した?)
普通席の座席はどう進化した?
普通席シートにもパーソナルモニターがあり、そのサイズは13.3インチとノートPCなみの大きさです(一部の最前列は10.1インチ)。電源は前の席の背面下部にあり、自分の席の足下にあるタイプと比べて、コンセントを目視しながら挿せるといった快適さがありますね。USBポートはパーソナルモニターの下部に配置されています。
ちなみに普通席は自動車のシートを長く開発・販売してきたトヨタ紡織と共同開発したシートで、どのような体格の人でも心地よくフィットする形状となるよう設計されています。実際に176cmの小太りおじさんである筆者が座ってみましたが、座り心地が良く、2時間程度の国内線なら苦にならなそうです。
残念なのは、プレミアムクラス・普通席どちらもUSBポートがType-Aのみということ。最近はType-Cのスマホやガジェットが増えてきていますし、筆者も飛行機に乗るときだけ別途Type-Aのケーブルを携帯するというのがかなりめんどうだったりします。座席にType-Cポートを搭載している航空会社のシートも出てきていることから、ここはシートの一部設計変更で対応して欲しかったところです。
このあたりは飛行機に限らず、バスや公共施設、レストランなどに設置されている無料のUSBポートなども同じですが、新しい機材や備品としてUSBポートを導入する際には、できればType-AではなくType-Cにして欲しいですよね。
(次ページ:安全面への信頼は?)
ANAとボーイング両方の整備士が安全面を確認
今年1月にアメリカで737-MAXシリーズのドア脱落事故があり、ボーイング製の航空機に対して品質低下を懸念する声も上がっています。そのため、今回の導入に関しては、ボーイングだけでなくANAからも整備士とパイロットを派遣し、機体チェックやテストフライトをしたとのこと。
テストフライトを担当したANA フライトオペレーションセンターB787部機長の谷口涼氏は、失速警報の稼働確認などを実際に自分で操縦してテストしており、「厳しいチェック項目をクリアした機体のみがANAの機体として受領される」と話しています。
また現地で4ヵ月ほど滞在し整備を担当したANA整備センター 機体事業室ドック整備部の坂本雅宏氏は「ボーイングなどが定めた基準だけでなく、ANA独自の基準で検査をしており、メーカーの基準に適していても是正措置を求めていくこともあった」と説明。安全性には万全を期して取り組んでいるようです。
今回お披露目に使用したANAの787-10は、機体番号「JA983A」で日本に2番目にデリバリーされた機体です。3月17日に羽田空港から新千歳空港へと向かう初便は、日本に最初にデリバリーされた「JA981A」が投入される予定です。
ANAでは今後4月までに2機の787-10国内仕様機を受領予定ですので、これから搭乗する機会も増えそうですね。ちなみにANAの787-10国内線仕様を狙って乗ってみたい場合は、予約時に仕様機材が「78K」と記載されているフライトを選びましょう!
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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