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【鳥取大学×東京薬科大学】ヒト染色体領域のクローニングを飛躍的に改善する技術を開発~マウス人工染色体を用いたヒトゲノム研究・創薬研究を加速~

Digital PR Platform / 2024年1月12日 14時5分

また本研究では、CHO細胞内に存在するMACとヒト染色体を、DT40細胞への移入とLoxP挿入を使用せずに転座させる方法についても検証しました。従来は、相同組換えを用いた部位特異的染色体改変のために、ヒト染色体をDT40細胞へ導入することが必要でした。また、Cre-LoxP組換えシステムを利用したヒト染色体とMACの組換えが利用されてきました。一方で、近年報告されたCRISPR/Cas9ゲノム編集技術は、どのような細胞においても任意の遺伝子配列を標的として簡便にDNA切断を引き起こすことが可能であり、さらに複数の染色体を同時に切断する事で染色体転座が誘発されることが報告されていました。そこで本研究グループは、CHO細胞内のMACとヒト染色体間で意図的にCRISPR/Cas9誘導性の染色体転座を引き起こすことで、MAC上にヒト染色体を転座できると仮説を立て、実験を行いました。その結果、低頻度ながらもMACとヒト染色体の転座を誘導できることがPCR解析によって明らかとなりました。また、低頻度で存在する転座染色体を保持する細胞を、PCRをベースとしたスクリーニング方法(段階濃縮クローニング)によって、クローン化することに成功しました。取得したCHO細胞クローンは、MACとヒト染色体が繋がった転座染色体を保持しており、その構造や内部の遺伝子配置に顕著な異常は認められませんでした。このことから、ヒトiPS細胞から直接的に単離した染色体を、CHO細胞内でMAC上に速やかに搭載することが可能になりました。従来技術では7回以上の染色体移入または改変操作が必要だったのに対し、本研究の新規方法はわずか3回の操作でヒト染色体がMAC上に搭載することができました。本成果は、ヒト染色体搭載MACの構築工程を大幅に短縮することにより、新規TCマウスの作製を大きく加速すると考えられます。

<今後の展開>
従来のヒト染色体保持A9細胞ライブラリーに由来するヒト染色体では、構造異常が生じていることが報告されていました。これは、がん細胞としての性質を持つA9細胞のゲノムや染色体が不安定であることが原因として考えられています。正常に近い染色体を持つヒトiPS細胞から直接染色体を取得する技術は、A9細胞を介さないことにより、完全に近いヒト染色体を供給できると期待されます。

従来は、新たにヒト染色体を単離することの困難性から、作製済みのヒト染色体保持A9細胞ライブラリーが染色体のリソースとして利用されてきました。本研究成果を活用することで、新たに個人の細胞をiPS細胞化して染色体を単離し、様々な多型を持つ染色体をMACへ搭載した上で動物個体へ導入することも可能です。また、拡充が進んでいる疾患iPS細胞ストックから疾患染色体を取得し、MAC上へ搭載することで、これまで作製が困難だった遺伝性疾患のモデル動物作製への応用が期待されます。

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