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ヒトラクトフェリンの細胞内送達によりがん細胞増殖を抑制~細胞内小器官のpHに関与、新たながん治療法など応用期待~東京工科大学大学院 バイオ・情報メディア研究科

Digital PR Platform / 2024年3月7日 20時5分

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 東京工科大学(東京都八王子市、学長:香川豊)大学院 バイオ・情報メディア研究科の栗本大輔(博士課程3年)、同トルン ディン ハゥエーアン(修士課程2年)、同佐藤淳教授らの研究グループは、ヒトラクトフェリン(hLF)(注1)をがん細胞内に送達させることで、がん細胞の増殖を阻害する現象を見出しました。
 hLFによるNa⁺/H⁺交換輸送体7(NHE7)(注2)の発現促進を介して、がん細胞内小器官のpH恒常性を破綻させる新たなメカニズムによるもので、新たながん治療法への応用などが期待されます。





 本研究成果は、学術誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」オンライン版(2024年1月5日)に掲載されました。hLFを用いたバイオ医薬品の開発は、バイオベンチャー企業の株式会社S&Kバイオファーマ(注3)において進められています。


【研究背景】
 NHE7は、細胞内小器官であるトランスゴルジ網(TGN)(注4)におけるpH恒常性に関与しており、肺腺がん細胞では、TGNからH⁺を放出することでTGNのpHを弱酸性に保ち、がん細胞の増殖と生存に寄与しています。遺伝子ノックダウンによるNHE7機能阻害は、TGNのpH恒常性を破綻させることで膵臓がんの増殖を抑制したのに対して、正常細胞には影響しないことが近年報告されており、がん治療の標的となる可能性が示されています(文献1)。一方、膵臓以外のがん種に対する効果は不明でした。佐藤淳教授らは、ヒト血清アルブミン(HSA)をhLFに融合させたhLF-HSAは、がん細胞内への取り込みが向上し、その抗腫瘍活性が増強することを発見しています(注5)。本研究では、HSA融合により細胞内に送達されたhLFの誘導する抗腫瘍活性に関して、NHE7の関与をヒト肺腺がん細胞で検証しました。



【研究成果】
 hLF-HSAは、肺腺がんの細胞内小器官を弱酸性からアルカリ化し、その増殖を阻害しました(図1)。一方、hLF-HSAによる細胞内小器官のアルカリ化及び細胞増殖阻害は、遺伝子ノックダウンによるNHE7機能阻害により著しく減弱したことから(図1A,B)、NHE7がその標的分子であることが示されました。hLF-HSA処理により、NHE7の発現量が上昇したことから、hLF-HSAは、TGNで機能するNHE7の発現量を高めることでTGNをアルカリ化し、がんの増殖を抑制することが明らかとなりました(図2)。
 遺伝子ノックダウンによるNHE7機能阻害は、膵臓がんではその増殖抑制が報告されていますが、肺腺がんではその細胞増殖には影響しませんでした(図1B)。これらから、肺腺がんに対しては、NHE7ノックダウンではなく、hLF-HSAで観察されるようなNHE7機能促進による細胞内小器官pH恒常性の破綻が、その治療法として有効である可能性を示しています。またその汎用性を検証するために、hLF-HSAの膵臓がん細胞の増殖に対する影響も検証したところ、肺腺がん細胞同様に細胞増殖阻害を誘導しました。hLF-HSAは、正常細胞の増殖には影響しないこともすでに報告されています(文献2)。

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