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代謝における細胞分化の役割に迫る

Digital PR Platform / 2024年3月22日 9時0分


 葉では異形細胞と乳管細胞にのみアルカロイドが蓄積するため、成長途上の種子胚でも同様かを確認しました。アルカロイドと反応し褐色沈殿を作るドラーゲンドルフ試薬で発芽後48時間目の胚の切片を染色したところ、乳管細胞が褐色に染色され、種子胚においても乳管細胞特異的にアルカロイドが高蓄積していることが示されました(図3)。


[画像4]https://digitalpr.jp/simg/1706/85178/600_254_2024031917313065f94d621496e.jpg
図3 葉および種子胚の切片のアルカロイド染色

        アルカロイドと反応して褐色沈殿を作るドラーゲンドルフ試薬を用いて染色した、葉(上)および種子胚(下)の
        切片の光学顕微鏡写真。UV励起すると自家蛍光を発する乳管細胞が茶色に染色されている。スケールバーは0.2mm
        を表す。


 これまで、特化代謝産物の機能は成長した植物体が外敵から身を守ることであると考えられてきたため、多くの研究は成熟した葉を用いて行われてきました。種子に着目した本研究の成果は、植物の一生の中で最も脆弱(ぜいじゃく)な時期といえる発芽から芽生えの時期においても、アルカロイドはニチニチソウにとって重要な役割を担っていることを示唆しています。
 また、ニチニチソウのアルカロイドは虫や草食動物からの被食に応答して合成されることが知られていましたが、今回の研究から、植物の発生・成長にも連動して合成されることが明らかになりました。ニチニチソウアルカロイド生合成には30もの合成酵素遺伝子が働いています。これらの遺伝子が発芽後一斉に活性化されるのではなく、発生段階や発現場所に関連した異なる制御を受けていることには生理学的な理由があると考えられます。

今後の期待
 今回の研究により、発生・成長に連動したニチニチソウアルカロイド合成の制御機構の存在が示唆されました。今後、この未知の制御機構を研究することで、ニチニチソウが非常に複雑な化学構造を持つアルカロイドを合成・蓄積できる仕組みの解明につながります。
 一般に、植物の特化代謝産物は複雑な化学構造を持ち人工的な合成が難しい一方で、人間生活において重要な役割を担うことから、その安定的な生産が求められています。植物特化代謝を酵母など培養の容易な生物で再現し、効率的に植物特化代謝産物を合成しようとする研究が世界中で行われていますが、いまだ高効率での化合物生合成には成功していません。知られざる巧みな特化代謝とその制御機構を植物から学ぶことは、人間にとって有用な植物特化代謝産物の安定供給を目指す研究の発展に大いに貢献するものです。
 今回の研究は、国際連合が定めた17項目の「持続可能な開発目標(SDGs)[5]」のうち、「3.すべての人に健康と福祉を」への貢献が期待できます。

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