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【インタビュー】「パスト ライブス 再会」セリーヌ・ソン監督が語った、“沈黙の力”と愛の描き方、人生における時間にまつわる考察

映画.com / 2024年4月4日 13時0分

 「以前『誰かとデートすることを描いたものではなく、愛について描いたもの』と言ったのは、どの愛も大切だと思うからです。私たちの人生で、ひとつの愛情が別の愛情と比べて大きいだとか、重要だとか、意味があるだとか、比較はできないと思うんです。ノラにとっては、ヘソンとの短い間の愛情も、アーサーとの人生を通しての長い愛情も、同じように大切だと。些細な会話からも、愛情は生まれると思うんです。愛全体の大きい構図を描きたかったので、『デート映画』と一括りにはしませんでした」

 プレスのなかでリーは、選択を積み重ねて人生を歩むノラを見つめ、「私たち人間にとって抗えない、人生が一度しかないことは、すごく不公平なんです」と語っている。またソン監督は劇中で3つの時代を描き、「時間というものが、それぞれの人にどのようにとらえられているのかを描きたかった」と、その意図を明かしている。

 こうした発言を聞くと、“時間”や“場所”は通常、人間にとっての限界を提示するものでありながら、本作には「12年があっという間に過ぎたかと思えば、2分が永遠のように感じることもある」「ノラを通して、出会うはずのなかったヘソンとアーサーが時空を超えて出会う」など、“可能性”を見出そうとする試みがあると感じた。人生における“時間”や、それと向き合う姿勢について、どのような考察があったのだろうか。

 「時間というものは過酷で、常に過ぎ去っていくのです。これは、誰にとっても共通していて、時間はコントロールできず、私たちはその結果を受け入れなければならない運命にあると思います。本作は恋愛について描いているといわれますが、ただそれだけではなく、おっしゃる通り、時間というテーマも大切に描きました。私たちの人生は限界があり、1度しかないものです。その場所、その瞬間というのは、1度きりしか経験することはできない。それが正しいタイミングで、正しい場所なのか、正解は誰にも分かりません」

 「そうしたテーマを描くと同時に、『過ぎゆく時間は矛盾しているものでもある』と示したかったんです。(ノラとヘソンがオンラインでの会話を経てから、実際に再会するまでの)12年が一瞬で過ぎ去ることもあれば、(終盤のあるシーンでの)2分が永遠に感じることもある。私にとっても、10年前を昨日のように感じることもある一方で、この10年間を時間としてしっかり感じることもある。このように、時間は矛盾しているということを、本作で皆さんに伝えたかったのです」

 北米では当初4スクリーンで公開されたが、多くの人々の支持を受け、上映劇場が拡大。そして、世界の映画祭で246ノミネート・88受賞(3月29日時点)を誇り、果てはアカデミー賞の作品賞と脚本賞にノミネートされるほど、大きなムーブメントが巻き起こった。ソン監督は作り手として、「パスト ライブス 再会」が辿った道を、どのように見つめていたのだろうか。

 「初長編監督作品だったので、何を期待するべきか、どのように展開していくのか、私自身も分からなかったんです。自分と向き合う1年でもあったし、新しい自分を発見する1年にもなりました。私が映画監督であるということを、改めて認識し、発見した経験でした。いまは早くカメラの後ろに立ちたい、新しい作品に取りかかりたいと、ワクワクしています」

 「パスト ライブス 再会」は、4月5日から東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。

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