黒沢清監督が語るアジア・フィルム・アワードの思い出 共同製作、新作映画、今後の展望についても明かす
映画.com / 2024年4月9日 10時0分
世界的にも高い評価を受ける黒沢清監督にとって、アジア全域版アカデミー賞「アジア・フィルム・アワード」(AFA)は思い入れの深い場所だ。2008年に公開された「トウキョウソナタ」は、第3回AFAで作品賞と脚本賞を受賞。第15回では「スパイの妻 劇場版」が作品賞を受賞している。そして、2024年に開催された「第17回アジア・フィルム・アワード」では、日本人初となる審査委員長を務め上げた。
映画.comは、香港で行われた授賞式の前日(3月9日)、黒沢監督にインタビュー(https://youtu.be/aaRi1kQfsss)を敢行。AFAの思い出、香港、今年の新作などについて語ってもらった。(取材・文/徐昊辰)
――アジア・フィルム・アワードの審査委員長を務めることになりましたが、率直なお気持ちを教えていただけますか?
大変光栄だなと思っています。いきなり依頼が来たものですから、喜んで引き受けました。ここだけの話ですが、引き受けた最大の理由が「香港に行きたかった」からです。香港が本当に大好きで、ここ何年かは行けていませんでした。香港の美味しいものが食べられる、街をぶらぶら歩き回れる――そんなことを考えただけで、すぐにお引き受けしました。
――実際、香港に来てみていかがでしたか?
変わったところもありますが、佐敦(ジョーダン)や油麻地(ヤウマテイ)は全然変わっていないので、ほっとしています。(取材時点では)香港島方面に行けていなくて、ちょっと残念ですが……ただ本当に物価は高いですね。円安の影響もあると思いますが、昔は(食べ物が)すごく安くて美味しかった。美味しいことに変わりはないのですが、こんな高くなったとは、ちょっとびっくりしています。
――アジア・フィルム・アワードとは、かなり深い縁がありますよね。「トウキョウソナタ」は第3回の作品賞&脚本賞、「スパイの妻 劇場版」は第15回の作品賞を受賞しています。
「スパイの妻 劇場版」の時は、本当にコロナの真っ只中でしたよね。その時は釜山に滞在していて、自分の部屋からオンラインで参加しています。受賞時に何かコメントを言ったと思いますが、(そのような状況だったので)1ミリも楽しくなかったです(笑)。
「トウキョウソナタ」は、第3回開催時でした。アジア・フィルム・アワードが始まったばかりの頃。あの時は、とても楽しかったです。確かに会場はまだ湾仔(ワンチャイ)の方で、すごく豪華でした。よく覚えていますが「壇上に立って何かコメントをする時は、全部英語でやってくれ。どうしても無理なら、日本語でもいいが、できたら英語でやってくれ」と言われました。僕はあの時もとても緊張していて、一生懸命英語のスピーチを準備しました。あの時は受賞結果も事前に知らなかったので、脚本賞をいきなりいただいて、準備してきたスピーチを英語で話しました。これで終わったと安心していたら、今度作品賞も頂いた。準備した英語スピーチは全部話したので、ごまかしながら何とか四苦八苦(笑)。英語に関しての“一番焦った”という非常に強い記憶として残っています。
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