通勤手当が減ると、年金が減る?
ファイナンシャルフィールド / 2021年4月22日 22時30分
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、会社員の働き方にも変化が生じています。
在宅勤務、テレワーク、サテライトオフィスの活用など、必ずしも通勤をしない、または通勤の回数が減少するケースも多くなっています。企業によっては、こうした状況を背景に通勤手当を定期券による支給から実費精算などに変更する動きが見られます。
今回は、このようなコロナ禍での変化が私たちにどのように影響してくるのか、その可能性について確認してみたいと思います。
通勤手当の取り扱いの変化
前述のとおり、企業によっては通勤手当の定期券による支給を廃止し、実費精算や回数券などでの支給に移行しているケースがあります。また、定期券で支給する場合の基準を以前よりも厳しくしているケースも多いようです。例えば、「在宅率〇%以上」、「1ヶ月当たり〇日以上出社」、「別途支給する在宅手当との選択制」などがあります。
交通機関を利用した場合の通勤手当
電車やバスなどの交通機関を利用した場合の通勤手当は、1ヶ月当たり15万円を限度額として所得税等が非課税となります。国税庁のホームページでは、この場合に非課税の対象となる通勤手当は「通勤のための運賃・時間・距離等の事情に照らして、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額」とされています。
少し分かりづらい表現となっていますが、つまり「最も経済的で合理的な経路による金額」として、通勤定期券の金額が想定されているということです。また、ほとんどの会社員の場合、実際の所得税等の計算においては通勤手当の額が非課税限度額内となっているため、定期券であれ、実費精算であれ、所得税等の額には影響はないことになります。
その一方で、社会保険料の算定基礎となる「報酬月額」は、通勤手当を加えて計算することとなっています。つまり、報酬月額には基本給をはじめ、通勤手当や残業手当(割増賃金)、住宅手当など、毎月支給されるものについては含めて計算します。この報酬月額の金額を基にグループ分けされたものが「標準報酬月額」です。
標準報酬月額は標準報酬月額表に当てはめて算定されますが、例えば、報酬月額が19万5000円以上21万円未満の場合には、標準報酬月額は20万円の等級(令和3年度版)となります。そして、この標準報酬月額を使って健康保険料や厚生年金保険料、介護保険料の各人の保険料負担額が決定されることとなります。
通勤手当が減少した場合の影響
お勤めの企業の状況や各人の出社日数などの違いによって異なりますが、ここでは分かりやすく、コロナ禍での在宅勤務の奨励により出社日数が明らかに減少したケースを想定してみましょう。
この場合、通勤手当の支給額の減少のみならず、残業手当なども減少していることもあるでしょう。結果として、報酬月額が減少することで健康保険料や厚生年金保険料が減額される場合があります。
前述のとおり、健康保険料などの金額は標準報酬月額によって分類された「等級」によって算出されます。報酬月額が減少することで等級が下がれば、保険料の金額も減額されることになります。会社員一人ひとりから見れば、毎月支払う健康保険料などの金額が減額されることで、負担の軽減につながる要因となります。
別の見方をすると、将来、老齢厚生年金として受け取る年金額は、平均標準報酬月額を基に被保険者期間の月数と一定の比率を掛けて算出されます。そのため、報酬月額が慢性的に減少してしまうと、受け取ることができる年金額が減少する要因ともなるのです。
また、老齢厚生年金の額から算定される障害厚生年金や遺族厚生年金の額にも影響するほか、傷病手当金や出産手当金の金額にも影響が及びます。
まとめ
会社員を雇用する企業側からすれば、通勤手当を過剰に負担することなく、実質的な出社実績による支給とすることでコスト削減につながる可能性があります。会社員一人ひとりにとっては、それほど通勤手当にのみスポットを当ててナーバスになる必要はないと思いますが、将来受け取る年金額にも多少なりとも影響があるとの事実だけは知っておくべきでしょう。
出典
国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
日本年金機構 厚生年金保険料額表
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
物価高の世の中なのに、4月から給料が下がります。社会保険料の天引きに反映されるのはいつからですか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月24日 10時10分
-
【給与明細の理解度を先輩社会人に調査】 6割が給与明細を必ず確認するものの、正確に理解していない 「手取りと額面の違い」わからない4割弱 プロが解説!「給与明細の見方と確認すべき項目」
PR TIMES / 2024年4月19日 13時40分
-
年金見込額12万円、退職間近の64歳女性「働いて年金が減るなんて、そんなまさか」驚きから一転、65歳以降も働く決断をしたワケ【FPが解説】<br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月8日 11時15分
-
定年後に嘱託職員として働き、月収「48万円以上」あると特別支給の「老齢厚生年金」はもらえないって本当?
ファイナンシャルフィールド / 2024年4月4日 22時30分
-
新社会人「月給20万円だと実際にはいくらもらえますか?」 - 給与明細の額面と手取りを解説
マイナビニュース / 2024年4月2日 11時0分
ランキング
-
1突然現場に現れて「良案」を言い出す上司の弊害 「気になったら即座に直したい」欲求への抗い方
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 9時0分
-
2なぜ歯磨き粉はミント味? ヒット商品の誕生には「無駄」が必要なワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月26日 8時0分
-
3濃口醤油と淡口醤油、塩分が高いのはどっち?…醤油の「色の濃さ」と「味の濃さ」の知られざる関係
プレジデントオンライン / 2024年4月26日 8時15分
-
4「加賀屋」50歳の元若女将が選んだ"第2の人生" 震災からの復興への道、仕事術について聞く
東洋経済オンライン / 2024年4月26日 13時0分
-
5円安、物価上昇通じて賃金に波及するリスクに警戒感=植田日銀総裁
ロイター / 2024年4月26日 18時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください