生命保険料控除は、確定拠出年金も含めて家計全体で節税効果を考えよう
ファイナンシャルフィールド / 2018年9月22日 9時0分
今回は「生命保険料控除」についてです。 生命保険料控除も「所得控除」のひとつです。そのため、次の計算式にもとづいて生命保険料控除を一定の範囲内で適用させていくと、結果として所得税の節税につながりやすくなります。 収入-給与所得控除=給与所得 給与所得-所得控除=課税所得金額(いわゆる所得) 課税所得金額×所得税率=所得税
「生命保険料控除」の「旧制度」と「新制度」
生命保険料控除には、「旧制度」と「新制度」があります。
平成23年12月31日以前に加入した生命保険や個人年金保険については旧制度が適用され、平成24年1月1日以降の生命保険や介護・医療保険、個人年金保険については新制度が適用されます。
旧制度の生命保険料控除は「旧生命保険料控除」と「旧個人年金保険料控除」に分けられており、新制度の生命保険料控除は「新生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」、「新個人年金保険料控除」とに分けられています。
これらの保険料控除は、生活をするうえでの必要経費という意味で、所得控除の適用を受けることができます。
「旧制度」と「新制度」それぞれの控除額
旧制度における「旧生命保険料控除」「旧個人年金保険料控除」では、それぞれ、年間で最高5万円まで控除が認められています。
○旧契約にもとづく場合の控除額
■年間の支払保険料等
・25,000円以下
■控除額
・支払保険料等の全額
■年間の支払保険料等
・25,000円超50,000円以下
■控除額
・支払保険料等×1/2+12,500円
■年間の支払保険料等
・50,000円超100,000円以下
■控除額
・支払保険料等×1/4+25,000円
■年間の支払保険料等
・100,000円超
■控除額
・一律50,000円
一方、新制度における「新生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「新個人年金保険料控除」では、それぞれ年間で最高4万円の控除となっています。
○新契約にもとづく場合の控除額
■年間の支払保険料等
・20,000円以下
■控除額
・支払保険料等の全額
■年間の支払保険料等
・20,000円超40,000円以下
■控除額
・支払保険料等×1/2+10,000円
■年間の支払保険料等
・40,000円超80,000円以下
■控除額
・支払保険料等×1/4+20,000円
■年間の支払保険料等
・80,000円超
■控除額
・一律40,000円
トータル控除額は「旧制度」が10万円、「新制度」が12万円。「新制度」が得?
何らかの生命保険に加入されている場合、多くの方が生命保険料控除の限度額を使い切っていることが見受けられます。
旧制度では、「旧生命保険料控除」と「旧個人年金保険料」がそれぞれ年間5万円までの控除が受けられるため、トータルの控除額は年間10万円になります。かたや新制度では、3つの控除がそれぞれ最高で年間4万円まで認められているため、トータルの控除額は年間12万円になります。
このようなことから、新制度の方がお得という話を一時よく耳にします。しかし、前回お伝えした確定拠出年金の掛金にかかる「小規模企業共済等掛金控除」を含め、家計全体で所得控除による節税効果を考える必要があります。
節税効果を考えるには「個人年金保険」の加入是非がポイント
ポイントは「個人年金保険」の加入是非です。
個人年金保険は、老後の生活資金を補てんするのが目的です。同じく、確定拠出年金制度も老後の生活資金を補うのが目的となっています。
個人年金保険料控除は、旧制度で年間最高5万円。新制度で、年間最高4万円が認められていますが、確定拠出年金の掛金は「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除の適用が受けられます。
目的が同じなら節税効果の高い確定拠出年金の方が、家計全体の資金効率が高まり、老後のお金を貯めやすくなります。
このように考えたうえで、旧制度と新制度どちらが得かを考えていきます。それぞれの控除額を限度額まで使い切る場合、旧制度では「旧生命保険料控除」が年間で5万円、新制度では「新生命保険料控除」と「介護医療保険料控除」で年間4万円ずつとなっているため、トータルで年間8万円になります。
旧制度のもとでは、生命保険料控除には死亡保険の保険料だけでなく、医療保険や介護保険などの保険料も含まれます。一方、新制度のもとでは、死亡保険料は生命保険料控除に含まれますが、医療保険や介護保険などの保険料は介護医療保険料控除に該当します。
このように比べていくと、新制度の方が家計全体で見た節税効果は高いということができます。
生命保険料控除を考える際は、家計全体の節税効果を図ることが大事
生命保険料控除という所得控除は、旧制度と新制度を組み合わせて計算することができます。貯蓄性のある死亡保険などに加入されている場合、節税効果だけで見直しをしようと考えるのは好ましくありません。
生命保険料控除について考える際は、前述の確定拠出年金にかかる小規模企業共済等掛金控除も含め、家計全体で節税効果を図りながら考えることが重要なポイントになります。
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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