公的年金だけで生活できるか心配です…「個人年金保険」や「私的年金」を活用した方がよいでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年3月15日 9時40分
近年、ニュースなどで老後2000万円問題が大きな話題になるなど、超高齢化社会が進むなかで老後資金への関心が高まっています。公的年金だけでは、老後の生活費が不足することを心配している人も多いかもしれません。 また、老後資金を準備する方法として「個人年金保険」への加入を考えている人もいるでしょう。本記事では、公的年金制度の概要や、公的年金に上乗せできる私的年金のほか、個人年金保険の特徴について紹介します。
公的年金制度の概要
日本の公的年金制度は、2階建て構造になっています。1階部分として、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)があり、2階部分は会社員や公務員が加入する厚生年金保険となっています。
自営業者や農業者、学生、無職などの人は第1号被保険者として国民年金だけに加入しています。
一方、会社員や公務員は第2号被保険者として国民年金と厚生年金保険の両方に加入しており、第2号被保険者に扶養されている配偶者は、第3号被保険者として国民年金のみに加入することになります。
私的年金とは?
公的年金の上乗せの給付を保障する制度として、私的年金があります。前述のとおり、公的年金は2階建て構造のため、私的年金は3階部分に該当する制度と考えられます。
私的年金には主に以下のような制度がありますが、それぞれ加入できる要件などが異なります。
・確定給付企業年金制度(DB)
・確定拠出年金制度(DC)
・国民年金基金制度
・厚生年金基金制度
確定給付企業年金は企業年金の1つで、加入した期間などに基づいて給付額があらかじめ定められており、掛け金の拠出や運用は勤務先が行います。こちらは勤務先が制度を設けている場合に加入できます。
確定拠出年金は、拠出した掛け金について加入者が自ら運用の指図を行い、運用結果によって給付額が決まります。確定拠出年金には、企業型確定拠出年金と、個人型確定拠出年金の2種類があります。
企業型確定拠出年金は、勤務先で制度が導入されている場合に加入でき、掛け金は企業が拠出します。また、企業の拠出額、および毎月の拠出限度額を超えない範囲で、加入者が掛け金を上乗せする制度(マッチング拠出)を利用できるケースがあります。
一方、個人型確定拠出年金は個人で掛け金を拠出する点が異なり、会社員や公務員、自営業者などのほか、第3号被保険者も加入できます。
国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者と、国民年金に任意加入している60歳以上65歳未満の人や海外居住者の人が加入できる制度で、加入した期間などに基づいて給付額が決められている年金制度です。
厚生年金基金は、国に代わって厚生年金の給付の一部を行うとともに、独自の上乗せ給付を行いますが、平成26年4月1日以降、新規設立は認められていません。
これらの制度では税制上の優遇措置が設けられており、確定拠出年金で個人が拠出した掛け金や国民年金基金の掛け金は社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税の軽減につながります。
また、受取時に一時金で受給する場合は退職所得として退職所得控除、年金で受給する場合は雑所得として公的年金等控除の対象となります。
個人年金保険の特徴
個人年金保険は、保険会社が販売する商品の1つで、60歳や65歳など契約で決められた年齢から年金を受け取ることができる保険です。主に確定年金と、保証期間付終身保険の2つのタイプがあります。
確定年金は、年金の受取開始後、5年、10年、20年など契約で決められた一定期間、年金を受け取るものです。受取期間中に被保険者が亡くなった場合でも、遺族などが残りの期間に対応する年金、または一時金を受け取ることができます。
保証期間付終身保険は、保証期間中は被保険者の生死に関係なく年金が受け取れ、保証期間の経過後は被保険者が生存している限り、生涯にわたって年金を受け取れるものです。
また、外貨で運用する「外貨建個人年金保険」や、保険に投資信託などを組み込み、将来受け取る年金額や解約返戻金が変動する「変額個人年金保険」などの派生商品もあります。個人年金保険は、保険金を老後に年金形式で受け取ることができるので、老後資金を準備する手段の1つになるでしょう。
また、個人年金保険の保険料は所得税や住民税の生命保険料控除の対象となるので、税制面での優遇も受けられます。なお、個人年金保険で受け取った年金については、雑所得として所得税や住民税の課税対象になります。
個人年金保険と個人型確定拠出年金の比較
個人年金保険について、私的年金のうち個人型確定拠出年金と比較すると、確定拠出年金は60歳になるまで原則引き出すことができないのに対して、個人年金保険では元本割れする可能性があるものの、保険料払込期間に途中解約ができる点で柔軟性があります。
一方、税制上の優遇では個人型確定拠出年金と比べて劣る部分があります。
確定拠出年金は、社会保険料控除として掛け金の全額を適用できるのに対し、個人年金保険は生命保険料控除として、新契約(平成24年1月1日以後に締結した保険契約等)の場合は最大4万円(年間保険料8万円以上のケース)、旧契約(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)の場合では最大5万円(年間保険料10万円以上のケース)の控除となります。
受給時についても、確定拠出年金は年金形式で受け取る場合に公的年金等控除の対象となりますが、個人年金保険ではそのような控除がありません。
個人年金保険は老後資金の準備に有効ですが、加入に当たっては個人型確定拠出年金などとメリット・デメリットを比較することが大切でしょう。
まとめ
この記事では、公的年金に上乗せできる制度である私的年金のほか、個人年金保険について紹介しました。
老後資金をしっかりと準備しておきたい場合は、税制上の優遇が大きい確定拠出年金などと比較した上で、個人年金保険の利用を検討するといいでしょう。
出典
日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
厚生労働省 私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)
知るぽると 生命保険商品
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員
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