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日本でも人気なハイイールド債投信! ただし、リスクもあるので再確認

ファイナンシャルフィールド / 2018年12月3日 9時30分

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ハイイールド債で運用する投資信託が、日本でも人気です。2018年11月19日現在、ETF(上場投資信託)を除く投資信託の中で最も残高が大きいものも、米ドル建てハイイールド債で運用するものとなっています。   しかし、人気があるからといって、リスクが小さい訳では当然ありません。ここではあえて、ハイイールド債のリスクを改めて確認したいと思います。  

そもそもハイイールド債とは?

ハイイールド債を直訳すると、「高利回り債」となります。一見よいイメージを受けますが、高利回りの訳は、その債券の元本返済や利息支払いが滞るリスクが高いことにあります。
 
つまり、ハイリスク・ハイイールド債と言った方がより正確なものとも言えます。
 
もう少し細かい説明をすると、債券はその条件や発行体の信用力によって、格付け機関から格付けをされています。AAA(またはAaa)格が最も返済能力が高いという評価で、Cが最も返済能力が低い(つまりリスクが高い)という評価になります。
 
ハイイールド債とは、この評価がBBB(あるいはBaa)を下回っている債券です(格付けの表記の仕方は、格付け機関によって微妙に異なります)。
 
逆にBBB(あるいはBaa)以上の格付けを持つ債券を「投資適格債」と呼びますが、この投資適格債とハイイールド債では投資家層が大きく異なります。
 
年金基金や生命保険会社などといった安全志向の強い機関投資家は、基本的に投資適格債を中心に運用しています。一方ハイイールド債は、ヘッジファンドや個人投資家などが積極的に購入しています。
 

ハイイールド債の基本的なリスク

一番のリスクはやはり、発行体が破綻するなどして債券の元利払いが行われないことです。これを「デフォルト」と言います。デフォルトは景気の悪い時に増えますが、格付けの低い発行体ほどデフォルトしやすいと言えます。
 
次に、金利上昇のリスクです。金利が上昇すると債券の価格は通常下落しますが、ハイイールド債でもこれは概ね同様です。また、発行体は多くの場合、満期を迎えた債券の借り換えを行います。
 
しかし、金利が上昇していれば新たな借り換えが難しくなり、それがデフォルトにつながることもあります。
 
裏返して言えば、ハイイールド債の運用に最適な環境は、適度に景気がよく、金利上昇はあっても穏やかな時ということになります。まさに、数年前からの米国の環境です。
 

リーマンショック時とは違うリスク

米国で発達し、今でも米ドル建ての市場が一番大きいハイイールド債ですが、リーマンショック時には株式などと同様に大きく値下がりしました。
 
その後、景気回復と低金利政策によって価格は回復し、ハイイールド債で運用する投信などをそのまま持ち続けていれば、今ではリーマンショック前をも上回るほど値上がりしていると見られます。
 
このため、すぐに解約しなくてもよい資金で運用しているなら、値段が少し下がったからと言って慌てて売却しない方がよいとも言えます。
 
ただし、リーマンショックの頃と今では、市場構造が大きく変化している点は注意が必要です。その変化とは、世界的な債務の増大です。
 
国際通貨基金(IMF)の報告(※)によると、世界の主要国の、政府や金融機関を除く民間企業と家計の債務総額は、今や167兆ドル(約1京9000兆円)となり、2008年に比べて5割増えたと言います。
 
そして、さらに懸念されるのが、BBB格の債務が増大していることです。BBB格の米国の社債残高は現在2.5兆ドル程度とされており、2008年対比で3倍近く増えたという試算が多くなされています。
 
投資適格社債で構成されるブルームバーグ・バークレイズ指数で見ると、今やその49%までがBBB格の社債となっているのです。さらに言うと、BBB格社債の総額は、米国のハイイールド債の総額をも上回ります。
 
先に書いた通り、BBB格はハイイールド債になる一歩手前の水準です。もし今後、経済が悪化するなどして格下げされる企業が増えた場合、「ハイイールド債成り」する予備群が過去になく増えるということです。
 
投資適格から不適格級に格下げされた発行体を「フォーリン・エンジェル(堕天使)」と呼びます。フォーリン・エンジェルが大量に増えれば需給が悪化し、ハイイールド債市場全体の価格に、大きな下押し圧力がかかるリスクが高まると言えるのです。
 
今回はあえて、ハイイールド債のリスク面に注目しました。
 
もちろん、米国での金利上昇が緩やかなものにとどまり、また景気も大きく落ち込まなければ、高利回りが魅力のハイイールド債は引き続き有望な投資対象です。
 
値下がりしても、長く持てば価格が過去には戻る可能性があることは先に述べた通りです。それでも、自分が運用しているものにどういったリスクがあるのか知っておくことは、ハイイールド債に限らず重要だと考えます。
 
出典(※)国際通貨基金(IMF) 2018年10月国際金融安定性報告書
 
Text:北垣 愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
 

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