2500万円までの生前贈与の贈与税が非課税となる「相続時精算課税制度」メリット・デメリットは?
ファイナンシャルフィールド / 2020年3月24日 9時30分
2500万円までの生前贈与について、贈与税が非課税となる制度として相続時精算課税制度があります。この制度を利用するには、注意が必要な点があります。そこで今回は、相続時精算課税制度のメリット・デメリットについて解説します。
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度は、贈与税の暦年贈与(1月1日~12月31日に行われた贈与)の基礎控除額が110万円と少額であるため、被相続人から相続人への財産移転が行われにくいなどの状況から、若い世代への早期の財産移転を促進する目的で、2003年に創設された制度です。
相続時精算課税制度では、受贈者(贈与を受ける人)が贈与者(贈与する人)ごとに受ける生前贈与について、2500万円まで贈与税が非課税となり、贈与者の相続発生時に相続時精算課税制度を選択して贈与された贈与財産を相続財産に加えて相続税を計算します。
相続時精算課税制度の主な適用要件などについては、以下の通りです。
(1)対象者
贈与者:60歳以上の父母・祖父母
受贈者:20歳以上の子・孫
(2)対象財産
財産の種類に制限なし
(3)特別控除額
累計で2500万円まで
なお、2500万円を超えた場合は、超える部分に対して一律20%の税率が適用されます。
相続時精算課税制度のメリット
相続時精算課税制度の主なメリットは、以下の通りです。
(1)2500万円まで贈与税が非課税
2500万円までの贈与については、贈与税が非課税になります。
(2)収益物件の贈与で相続税対策になる可能性も
収益物件(賃料収入のあるマンションなどの不動産)を贈与した場合、贈与後の収益は受贈者のものになるため、相続税対策になる可能性があります。
(3)評価額が上昇すると予想される財産の贈与で相続税対策になる可能性も
相続財産に加算される贈与財産は、相続時の価額ではなく「贈与時の価額」となるため、評価額が上昇すると予想される財産を贈与することで、相続税対策になる可能性があります。
相続時精算課税制度のデメリット
相続時精算課税制度の主なデメリットは、以下の通りです。
(1)相続時精算課税制度を選択すると、暦年贈与に変更することができない
相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、相続発生まで暦年贈与に変更することができなくなります。また、その贈与者からの暦年贈与(1月1日~12月31日の期間の基礎控除額が110万円)も使うことができなくなります。
(2)年間110万円以下の贈与(暦年贈与)でも申告する必要がある
年間(1月1日~12月31日の期間)110万円以下の贈与(暦年贈与)であれば、贈与税の申告をする必要はありませんが、相続時精算課税制度を選択した場合は、年間110万円以下の贈与であっても、税務署に申告する必要があります。
(3)小規模宅地等の特例が適用できない
小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした場合、宅地の相続税評価額を宅地の種類に応じて80%または50%減額することができる制度です。相続時精算課税制度を選択して宅地を贈与した場合、その宅地に小規模宅地等の特例を適用することができなくなります。
まとめ
相続時精算課税制度は、生前贈与2500万円まで贈与税が非課税になるなどのメリットがある一方、相続発生まで暦年贈与に変更することができなくなるなどのデメリットもあります。
相続時精算課税制度の内容やそのメリット・デメリットをよく理解したうえで、この制度を選択するか否かの判断をする必要があります。
[出典]国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
執筆者:中田真
CFP(R)認定者、終活アドバイザー
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