コロナショック後の金利。私たちはどのように考える必要があるのか
ファイナンシャルフィールド / 2020年10月17日 12時0分
私たちにとって日常生活に身近な「金利」といえば、銀行預金や住宅ローンの金利かと思います。
ほぼゼロ金利の預金金利は、銀行にお金を預け入れるという点でほとんどメリットがないといえますが、住宅ローンを組む場合、固定金利・変動金利ともに低水準となっているため返済負担が比較的軽くなっているのが現状です。
このように預金金利や住宅ローンの金利については生活実感が伴っているため、日常生活の中では見えやすいものとなっています。しかし、資産運用をする上での金利となると、急によく分からなくなります。
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景気が良いとき、悪いときの金利はどういう状態?
資産運用をする際は、ある程度、「相場の変動要因」について知っておく必要があります。
その1つが金利です。
金利について簡単に説明すると、「短期金利」と「長期金利」の2つがあります。文字どおり、短期金利は期間が短めの金利、長期金利は期間が長めの金利です。平常時の経済状況や好景気においては、どちらかというと短期金利の方が長期金利よりも金利が低くなる傾向があります。これを順イールド(短期金利<長期金利)といいます。
逆に経済の状況が悪くなると、この関係性が逆転し、短期金利の方が長期金利よりも高くなることがあります。これを逆イールド(短期金利>長期金利)といいます。
これらは曲線を描くためイールドカーブと呼ばれますが、銀行の立場で考えると分かりやすくなります。銀行の本業はお金を貸すことです。このため、お金を貸しても返ってこないと困ります。
つまり、貸したお金をなるべく早く返して欲しいわけなので、すぐに資金を回収できる、例えば1年間といった返済期間の短い金利を低く設定し、逆に、なかなか資金を回収する見込みが立たない10年といった返済期間の長い金利は高めに設定しようとします。この結果、順イールドという「短期金利<長期金利」という関係性が成り立ちます。
一方、逆イールドにおいては、景気が悪いときに起こる短期金利と長期金利の関係性を表しています。
景気が悪いとき、企業は今すぐにでも運転資金などのお金を必要とします。銀行にとっては、より多くの企業などからお金を貸して欲しいと求められるため、資金需要がひっ迫し、また景気の悪化で企業に貸したお金が返ってこない可能性が高まるため、返済期間の短い金利を高く設定しようとします。
裏を返すと、このような状況下では企業は長い間お金を借りようとはしないため、期間の長い貸付資金に対する需要が減少し、その金利は下がっていきます。
銀行側からすると、今すぐにでもお金を借りたいが、お金が返せなくなる可能性のある企業よりも、少しぐらい返済期間が長くてもお金が返せる企業の方がありがたいため、期間の長い貸付資金に対する金利を下げることで、資金が回収できなくなる可能性を減らそうとするわけです。
このように見ていくと、順イールドは平常時の景気や好景気における金利の関係性、逆イールドは不景気における金利の関係性ということが分かります。
代表的な2つの金利指標
金利は資産運用をする上で、とても重要な要素になってきます。前述のように、景気が良いときと悪いときの判断を示す指標になりますし、また、これから景気が良くなるか、悪くなるかを予測する判断材料にもなります。
このように、景気の良し悪しを確認・予測するためにも使うことができる金利ですが、これらの代表格とされる金利が「無担保コール翌日物レート」と「10年物国債利回り」という2つの金利です。
無担保コール翌日物レートが短期金利、10年物国債利回りが長期金利に該当しますが、順イールドでは「無担保コール翌日物レート<10年物国債利回り」の関係が成り立ち、逆イールドでは「無担保コール翌日物レート>10年物国債利回り」の関係が成り立ちます。つまり、平常時の景気や好景気のときは前者が、不景気のときは後者が成り立つという関係性です。
資産運用をする際は、この2つの指標を見て景気の状況が良いのか、悪いのかを確認し、また、これから景気が良くなるのか、悪くなるのかの予測に役立てていきます。
コロナ禍の先の金利はどうなる?
新型コロナウイルス感染症が広がりを見せ、数ヶ月が経過しましたが、世界経済が急速に悪化し、景気が後退局面に入ったと広く認識されるようになりました。
このような状況に直面し、目先の資金需要が急拡大して、一時的に短期金利が長期金利を上回る逆イールドが生まれました。これを解消するために、日本のみならず、アメリカやEUなどの先進国は大規模な金融緩和政策を積極的に打ち出すようになり、短期金利と長期金利の関係性は順イールドに戻っていますが、両者の金利はこれまでの水準と比べて極端に低くなっています。
大規模金融緩和政策による大量の資金供給が要因ですが、コロナ禍、そしてコロナ禍の収束に向けて金利がどのように変化していくかを今後に向けて考えておくことが必要です。
このとき、キーワードになるのが「大規模金融緩和の継続」ですが、このような金融政策は、本来、景気の悪化を食い止めるために実施されます。
リーマンショック後の大規模金融緩和政策が記憶に新しいかもしれませんが、今回のコロナショックを受けて、さらなる大規模金融緩和政策が実施されるようになりました。これは景気を下支えし、回復するために行われるものなので、今後、景気が回復するまでの間、しばらく継続されることが考えられます。
日本の場合、2018年10月から景気後退局面に入っており、また、2019年10月から実施された消費税率の10%引き上げによる消費の落ち込みもあり、コロナ禍による実体経済の悪化から景気が回復するにはかなりの時間を要するでしょう。この間、極端に低くなった金利は、順イールドをある程度保ちはするでしょうが、依然として金利水準は低いまま推移するように思われます。
まとめ
このような予測の下、資産運用をする場合、私たちは老後に向けてどのようにお金を準備していけばいいのでしょうか。
今後、この問題がより一層問われてくる時代になりますが、金利についてこれまで話してきたようなことを知るだけでも、すでに目の前に敷かれているレールをある程度想定することができるようになります。相場の変動要因とそれぞれの関係性を知ることには、このような意味が含まれているため、今後の人生設計に役立てていただければ幸いです。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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