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『真夜中乙女戦争』二宮健監督インタビュー「自分が形に出来ていなかったふわふわしたものをキュッと形にしてくれた」原作への想い、キャストへの印象を語る

ガジェット通信 / 2022年1月22日 9時0分

10代・20代を中心に圧倒的支持を受け、Amazonでは総合カテゴリでベストセラー1位を獲得した 作家Fの初の小説「真夜中乙女戦争」。著書累計部数は64万部を超える新鋭作家による、 “平凡で退屈な日々を送る青年が自分自身と東京を破壊するまでの夜と恋と戦争”を描いた物語が、 豪華キャストスタッフにより待望の映画化。『真夜中乙女戦争』が公開中です。

本作の監督を務めた二宮健監督に作品へのこだわりについて、お話を伺いました。

――本作、拝見させていただいて本当に素敵な作品でした。監督は、原作を読んだ時どういう部分を映像化したいと思われましたか?

原作者のFさんと歳が近いのですが、そういう方が、今の空気感で描かれた小説で。追ってきたカルチャーだったり、「こういうことに憧れてきたよね」みたいなものが自分にも通じるものがありました。実は、本作のオファーをいただいたのが『チワワちゃん』公開前で、ちょうど90年代に描かれていた若者の話を、今に乗せていく作業をしていたんです。なので、同時代性という意味でも刺激的で「これは取り組んでみたいな」と思いました。

――Fさんの原作のレビューを読んでいると、「辛い時に読んでます」とか心の支えにしている方が多いみたいで。時代的な共通のものがあるんだなと驚きつつ、素敵だなと思いました。監督も原作に特別な何かを感じられましたか。

出会うのがもうちょっと早かったら、とんでもなく引きずり込まれてしまったかもしれないですね。今読むと、ぼんやりと10代に傷つけられてしまったようなその傷の癒し方が分からないまま成長してしまったことを、振り返って撫でてくれるような。自分が形に出来ていなかったふわふわしたものをキュッと形にしてくれたなという印象が強いです。

――僭越ながら、私は監督よりも年上なのですが、その「ふわふわしたものをキュッと形にしてくれた」という感覚分かります。ポスターコピーをFさんが考えられたのですよね。

そうですね。このポスターのキャッチコピーって往々にして悩むし、監督がキャッチコピーを作ることってないんですよ。宣伝部の方が付けるキャッチコピーって、「いや、その気持ちは分かるのだけど、とはいえ(宣伝は)既に自分の手から離れているから、もうこれを受け取るしか無いんだ」と思ってしまう部分もあるのですが、結果的に、そのキャッチコピーが正しかったかどうかはいつも藪の中ですよね。

そういう意味で、今回、Fさんは良い距離にいてくださった気がして。原作者だけど映画は僕らに委ねてくれていて、それでいてすごくコミュニケーションも取ってくださるし、本人も小説家というだけでなく、コピーライターのスキルも持っていて。彼が言葉を紡ぐ方法の中に小説がある感じだったので、結果的にFさんじゃないと作れないキャッチコピーだったんじゃ無いかなと思います。

――「絶望は、光になる。」って、短いですけど、すごい力がありますよね。

素敵ですよね。そう言った意味では、本作の宣伝プロデューサーの益田くんは僕と同い年で、割とざっくばらんにコミュニケーションが取れるからこそ、「Fさんも巻き込んで何かやろうよ」みたいなことが忖度なくフレッシュに実現できて。企画から一緒にやっているプロデューサーの高木さんも同世代で、そういう意味では、すごく年上の方に気を遣いながら…という事もなく作品を作ることができました。

――そういった共通認識って本当に大切ですよね。Fさんからは映画作りに対してお願いなどは無かったのですか?

シナリオの時点から一緒に開発していた部分あるので、むしろ僕らから「Fさん、ここ何か良いセリフない?」とか「Fさん、ここどう思う?」と伺うこともありました。Fさんも「やはりここはこうしてほしい」というのもあって。「今日、ステーキかお寿司、食べたいけど、どっちにする?」「俺は寿司だ」「俺はステーキだ」ってくらいのテンポ感で色々コミュニケーションが取れたので、ありがたかったです。

――素敵な距離感ですよね。Fさんから映画の感想は、お聞きになりましたか?

もちろん! 僕の前では良いことばっかりおっしゃってくれてましたけど。でも、何個か「僕はここに関しては、こう思っています」みたいなこともおっしゃってくれて。ありのまま、できた映画に関して伝えてくれたと思っています。

――主要キャストの3人についてもお伺いしたいです。永瀬廉さんも素晴らしい存在感、お芝居をされていましたが、ご一緒していかがでしたか?

廉くんは、プロデューサーより名前が挙がったのですが、偶然、前日にTVに出ていて。「誰だろう?」とネットで調べて、「ジャニーズの子なんだ。カッコいいな、この子」って思っていたんですよ、次の日に名前が挙がったので縁かもって思って。実は、先日King & Princeのライブに行かせていただいて、「廉くんってアイドルだったんだ」と改めて実感したんですよね。まわりのリアクションで、改めてアイドルということを感じたっていう。それくらい、廉くんがアイドルというところにはコミットせずにコミュニケーションを取っていました。

――良い意味で先入観が無くご一緒出来たということですね。

演技プランも含めて色々と話し合って探っていきました。おそらく廉くんが自宅で、いろいろ考えて練習してくれていたんだと思うんです。僕と話し合ったことに対して応えようとしてくれていたのが伝わってきて。この映画への出演が彼の成長につながっていたら、それほど嬉しいことはないです。『真夜中乙女戦争』を通して、彼は僕にとって素敵な俳優になってくれました。

――最初は、無気力な青年の役ですけど、表情もすごく上手だなと感じました。

彼は自分の潜在能力に気付いているようでいて、気付いていない感じもする。彼の中のOS、回路の中で自分の本当の力に徐々に近づこうとしている感じがして。僭越ながら、将来が楽しみですよね。

――これまでも面白い役の選び方をされているなと思っていたので、本作でもすごく良い役だなと思いました。池田エライザさんは、いかがですか?

すごく聡明な方で現場でのコミュニケーションがとてもとりやすくて。難しい役だったと思うのですが、池田さんだから軽やかに“先輩”という役を出来たのかなと。グレートな感じで“先輩”っていう役を体現してくれました。

池田さんは国内の女優さんだとなかなかできる方がいないような身体表現をされる方で。日本の俳優さんって喋る時ずっとじっとしている感じの方が多いんです。でも、池田さんって動き方がすごく自然で、手の動かし方だったり、身体性が高い。そう出来る方って実はあんまりいないって僕はずっと思っていて。彼女のナチュラルな佇まいは、肝が座っているからできるんだと思うんです。とても魅力的だなと思っていました。

――なるほど。モデルさんとか歌とか、色々やられていて、私も大好きなのですが、自然に表現が出来ていらっしゃるのかもしれないですね。

これは僕の憶測ですけど、モデル時代に、すごく自分のことを研究されていたのかなと。そのアプローチの仕方がお芝居に結びつきやすい形でやられたのかなっていう印象があって。ただ可愛いポーズを決めるとか、そういうことじゃなくて立体的に自分の身体性と向き合っていたからできているのかな?と…。これは本当に僕の推論ですけどね。

――オタクとしての発言になってしまうのですが、あんな素敵な先輩がいたら、絶対に恋してしまいます。少なくとも私は(笑)。

そうですね(笑)。例えば、僕って誰かにとっては廉くんが演じる「私」、誰かにとっては(柄本)佑さんが演じる「黒服」みたいに見えているかもしれないですが、誰にも池田さん演じる「先輩」みたいな人間には見えていないと思うんですよね。なので、僕自身も“先輩”に憧れてしまう。でも、いちばん共感するのは“先輩”なんです。でも、いちばんなれないのはなんでだろうな…と。そこが面白いです。

――監督のキャラクターについてのお話、本当に面白いです。柄本佑さん演じる“黒服”気味悪い役というか、存在感のある役でした。

“黒服”ってすごく難しい役なんです。そもそも限られた方しか演じられないなって思っていて。そういったものを違和感なくサっとやることが本当の意味での俳優としての佇まいだと思います。今となっては佑さん以外には誰が“黒服”できたんだろうって思いますが、オファーする段階では一般的には佑さんがこうゆう役をやるイメージがなかったんじゃないかと思います。チャレンジングなオファーの出し方だったかもしれませんが、むしろこの方以外の“黒服”はみたくないなって気持ちだったので、オファーを受けてくださって非常に嬉しかったです。

――悪人だか善人だか分からない、紙一重感が絶妙で。いま、SNSで信者になることってよく見ると思うので、そういう部分の展開が怖くて面白かったです。私は東京タワーの映し方がすごく好きなのですが、全体的にとても美しくて。映像でのこだわりはありましたか?

今回、趣味でカメラを回して本職は音楽家という、僕にとって“ジョーカーカード”みたいな友達を、映画の現場にカメラマンとして呼んでいるんです。イレギュラーな形で撮影したので、それがしっかり映画に出たなと思っています。僕自身、「日本で映画を作る上で、これって諦めないといけないことなのかな」って思ったことを彼が軽やかに叶えてくれた気がして。

そういった意味では僕は非常に心強いですし、「言葉にできないけど、この『真夜中乙女戦争』の映像の感じ、見たことないな」っていうふうにお客さんに伝わると嬉しいなと思っています。クリエイティブ的には初めてのことが多くて、自分で言ってしまうと身も蓋もないですが、僕の中では新境地なんです。…自分で言ってしまった(笑)。

――いえ!!本当に素晴らしいです。「日本で映画を作る上で諦めないといけないことなのかな」という部分について、少し詳しくお聞きしても良いでしょうか?

やはり日本の現場に野面で身を置き続けると、「これは面倒くさい」とか「これはやっても無駄だ」とか、「これはこういうものだ」となってきてしまう部分も多いんです。どんどん、その中でできる範囲のクリエイティブに限定されていってる気がして。もちろん、「その中で、いちばん良いものをやろう!」となるのですが、それも何回かやると結局袋小路になって、先に行けない気がしてきて。

今回、自分と近い距離の方々と一緒に作れたことで「何をカッコいいと思っていて、何をダサいと思っているか」の意思疎通が容易だったので、やりやすかったです。お互い映画好きですし、「あの作品のアレ」とか、分からなくても調べれば直ぐに文脈で分かったり。やはり自分が良いと思っていること、ダサいと思っていることがすれ違ってしまうと、どうしても空気が悪くなってしまいます。細かいことかもしれないですが、映画はディテールの積み重ねだと思うので、この作品では同じ方向を向いて「こういう角度でやっていこうよ」って角度を共有しながらできたことが気持ちよかったです。

――何がカッコいいって共通認識で持つことって時間がかかると思うので、最初から分かっていたら、ストレスなく表現できて良いですよね。

そう。その彼が音楽の劇伴も担当しているので。彼の頭の中では撮りながら音楽も鳴っているわけです。音楽に関しては僕の前の作品から担当してくれていて、信頼も置いていたので。そう。信頼できるって大事ですね。

――今日監督にお聞きしたお話を踏まえて、また映画を観直したいと切に思いました。今日は素敵なお話をどうもありがとうございました!

(C)2022「真夜中乙女戦争」製作委員会

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