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映画「パスト ライブス/再会」の“大人のラブストーリーの最高傑作”なる惹句に待った!(松尾潔)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年4月26日 9時26分

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(C)Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved配給:ハピネットファントム・スタジオ

 同い年の畏友、漫画家・井上三太くんが、YouTubeチャンネル「SANTASTIC!TV」で、今春のアカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされた米映画『パスト ライブス/再会』を斬った! これがじつに興味深かったのだ。チャミスル飲んでほろ酔い状態でマイクに向かった彼は、「ごめんなさい。でも感動しない。つまんねえなあ」と言ってのけた。多くの人が絶賛しても「自分としてはまったく受け入れがたいラブストーリー」なんだと。女性主人公は「ヤな女」だし、その夫の立場に立ってみるとこの映画は「なかなかに気持ち悪い話」ときたもんだ。いっぽうで「けっこう辛口のボクの奥さんは、一緒に観て泣いていました」と気になることも。

 さすがにここまで聞けば、ぼくも映画館に足を運ばずにはいられない。料金割引の利くサービスデーを狙って某日午後に観てきた。

 あらすじは以下の通り。1990年代後半、ソウル在住の12歳の少女ナヨンと少年ヘソンは互いに恋心を抱くが、ナヨンが親(父は映画監督、母は画家)の都合でトロントへ移住、離れ離れに。12年後、24歳。NY在住のノラ(ナヨンの英語名)と、依然ソウル暮らしのヘソン。オンラインで邂逅(かいこう)、スカイプで互いの思慕を確かめあった両者だが、やがてノラの申し出により再会の可能性に蓋をする。さらに12年後、36歳。劇作家となったノラは、グリーンカード取得の目的もあってユダヤ系作家アーサーと結婚している。その事実を知りながらノラに会うためにNYを訪れる独身のヘソン。24年ぶりの再会の7日間。ふたりが選択した運命とは?

 オリジナル脚本と監督を手がけたのは、これが長編デビュー作の韓国系アメリカ人女性セリーヌ・ソン。映画監督ソン・ヌンハンを父にもつ彼女は、この物語が実体験から生まれたことを明らかにしている。ノラを演じるのはアメリカ生まれのグレタ・リー(ファッショニスタとして有名)、ヘソンを演じるのはドイツ生まれのユ・テオ。

 実際に観終えて感じたことを、三太くんにならってぼくも率直に言ってみようか。

 なーんだ、「恋愛映画」ではないじゃん。もちろん恋愛の要素は大きいよ。だが監督が重心を置くのが恋愛ではないことは明らか。日本の配給会社が作成したポスターの「君にずっと会いたかった」「忘れられない恋があるすべての人へ」といった甘い惹句(じゃっく)は、ミスリード狙ってますよ。「せつなさが溢れる大人のラブストーリーの最高傑作」にいたっては待ったをかけたい。みなさんはどうかダマされないように!

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