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こんな秘境に日本人!? インドネシアの山奥で「幻のコーヒー」をつくる日本人に会ってきた!

&GP / 2016年9月4日 12時0分

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こんな秘境に日本人!? インドネシアの山奥で「幻のコーヒー」をつくる日本人に会ってきた!

その希少価値の高さから、コーヒー好きには「幻のコーヒー」とも呼ばれる「トアルコ トラジャ」。インドネシア・スラウェシ島でのみ生産されるコーヒーで、17世紀末にはヨーロッパの王侯貴族用に出荷され、珍重されていたのだとか。そんな「幻のコーヒー」の生産の背景には、日本人の並々ならぬ努力があると聞き、インドネシアの奥地を訪ねてきました!

 

トラジャの棚田風景。欧米人には人気の秘境スポットらしく、バックパック姿の観光客がちらほら トラジャの棚田風景。欧米人には人気の秘境スポットらしく、バックパック姿の観光客がちらほら

 

到着まで日本から丸2日!こんなところに日本人が?

 

赤土のワイルドな崖道を走り抜けるジープ 赤土のワイルドな崖道を走り抜けるジープ

 

トアルコ トラジャの生産地は、インドネシアの秘境とも言われるスラウェシ島トラジャ地方。日本からは飛行機でジャカルタまで約8時間、国内線に乗り継いで2時間で、スラウェシ島のマカッサルという都市へ。そこからトラジャまでは、車に揺られること約10 時間……。つまり片道だけでも丸2日!人里離れたこの山奥に、本当に日本人が働いているのでしょうか……。

その日本人に会うため、トラジャの中心地から、舗装されていない凸凹の山道をジープに揺られてさらに3時間。ペランギアンという小さな村に着きました。ここでは収穫期には週1回、現地の農家からコーヒー豆を買い付ける出張集買所が開かれているそうです。

小さな村の集売所で、コーヒー豆の精選をしている日本人男性の姿を発見 小さな村の集買所で、コーヒー豆の品質確認をしている日本人男性の姿を発見!

 

いました、いました! 地元農家の男性たちの大声が飛び交う中、インドネシア語でやりとりをしている日本人男性が。コーヒー豆を両手ですくいながら、豆の状態や香りを確認しています。

 

トラジャ在住の吉原聡さん。背景に写っているのはトラジャ族の伝統的な高床式住居「トンコナン」 トラジャ在住の吉原聡さん。背景に写っているのはトラジャ族の伝統的な高床式住居「トンコナン」

 

この日、コーヒー豆の集買をしていたのは日本のキーコーヒーが設立した現地法人トアルコ・ジャヤ社で働く吉原聡さん、今年で42歳。家族を日本に残し、ここトラジャで、単身赴任歴1年5カ月とのこと。日焼けした肌に、爽やかな笑顔が印象的です。

吉原さん(以下省略)「地元の農家にコーヒーの苗木を無料で配布し、各々で栽培してもらう。その収穫した豆を、このようにトアルコ・ジャヤ社で買い取っているんです。集買所は6カ所あり、街から一番遠いプルプル村だと標高1800メートルにもなります」

買い取るコーヒー豆は、脱肉・水洗い・乾燥までを終えた「パーチメント」の状態 買い取るコーヒー豆は、脱肉・水洗いを終えて半分乾燥させた「パーチメント」の状態

 

道路の整っていない山道では、栽培農家が収穫した豆を運ぶのも一苦労。トアルコ・ジャヤ社が山の奥地に集買所を設けたことは、この地域のコーヒー栽培の発展に大きく貢献しているようです。

こんな山奥でも日本人気質の徹底した品質管理!

コーヒー豆の品質管理担当者を指導する吉原さん コーヒー豆の品質管理担当者を指導する吉原さん

 

買い付けたコーヒー豆は、ランテパオという街にある事務所で、徹底して品質管理が行われます。ここでは集買所で買い付けた豆、仲買人と呼ばれる仲介業者から持ち込まれた豆などすべての豆の品質管理をしているそうです。

 

大きさや生産者ごとに、カップテスト用に用意されたコーヒー豆 生産者ごとに、カップテスト用に用意されたコーヒー豆

 

「50kg弱のパーチメントの麻袋ごとにサンプルを取り出し、豆が割れていないか、カビていないかなど状態をチェック。その後、同じ条件で脱殻・焙煎した豆を、カップテストと呼ばれる味覚調査で評価していきます」

 

工場長のユスフさん、従業員の〓〓さんと、カップテストをする吉原さん 集買マネージャーのユスリルさん、課長のトディンさんと、カップテストをする吉原さん

 

コーヒー豆は農産物であるため、年次やエリア、ロットごとに味の微妙な差異が出るのは当然のこと。風味や香りをできる限り均一にするため、鍛えられた人間の味覚と嗅覚で、味・香りの違いを的確に表現し評価していくのだそうです。

 

ひとつのサンプルにつき3杯のコーヒーを抽出。粉砕した豆にお湯を注ぐだけのシンプルな抽出法 ひとつのサンプルにつき3杯のコーヒーを抽出。粉砕した豆にお湯を注ぐだけのシンプルな抽出法

 

「この品質管理の条件をクリアできた豆だけが、トアルコ トラジャの商品になります。ちなみに名前のトアルコ(TOARCO)とは、トラジャアラビカコーヒー(TORAJA ARABICA COFFEE)の頭文字を組み合わせたもの。トラジャで栽培されたコーヒー豆の中でも、このクオリティのものだけをトアルコ トラジャと名付けています 」

日本人が復活させたパダマラン農場にも行ってみた!

パダマラン農場からの眺め。標高900〜1250mの高地ゆえの昼夜の寒暖差、弱酸性の土壌、適度な降雨量などコーヒーづくりの理想的な条件を満たしている パダマラン農場からの眺め。標高900〜1250mの高地ゆえの昼夜の寒暖差、弱酸性の土壌、適度な降雨量などコーヒーづくりの理想的な条件を満たしている

 

トアルコ・ジャヤ社のもうひとつの事業が、自社で経営するパダマラン農場の開発です。東京ドーム約113個分(530ヘクタール)という広大な敷地に、約35万本のコーヒーの木が生育。トアルコ トラジャの全生産量のうちの20%がここで栽培されています。

18世紀は「セレベス(スラウェシ)の名品」と謳われ、盛んに栽培・生産されていたトラジャコーヒー。第二次世界大戦以前、インドネシアはオランダ領だったため、オランダ人がコーヒーづくりに適した山に住むトラジャ族にコーヒーを生産させていたのだとか。しかし大戦の混乱で市場から姿を消し、コーヒー産業は衰退。1970年に荒れ果てた農場を再生したのが、日本のキーコーヒーでした。

「最初の赴任者がトラジャに来たのが40年前。当時は農場へ行く道もなく、ゼロからのスタートだったと聞いています。以降、後継して日本からの赴任者が来ていますが、私もそのひとり。慣れない地での生活はたいへんさもありますが、日々カップテストを行っていくなかで、良い品質の豆を購入できた日には達成感があります」

 

赤く熟したコーヒーチェリーだけを一粒ずつ手摘みで収穫 赤く熟したコーヒーチェリーだけを一粒ずつ手摘みで収穫

 

2016年はコーヒーチェリーが赤く熟しはじめたのが6月半ば。それからの2カ月は収穫最盛期となり、パダマラン農場は繁忙期を迎えます。

「最も忙しい時期は500名以上の日雇い労働者を雇っています。コーヒーづくりには地域の方々の協力が欠かせません。トラジャの人々とともに地域一体型事業をモットーとしています。日本とは異なり、イスラム教徒はお祈りの時間をもつ、キリスト教徒は日曜日の朝に教会へ行くなど、現地の生活や文化を尊重することも大切だと考えています」

 

歌を歌いながら収穫をする地元の女性たち 歌を歌いながら収穫をする地元の女性たち

 

パダマラン農場では正社員・契約社員を含めて約100名の従業員がいるのだとか。コーヒーづくりは農場経営、集買事業を通じて、雇用創出とコーヒー栽培の発展というふたつの意味があり、この地域の経済復興に役立っているのです。

 

湧き水で洗浄している豆をチェックする吉原さん 脱肉した豆をチェックする吉原さん

 

収穫したコーヒーチェリーは農場内の精選工場に移し、機械で脱肉し水洗いする。ここではコーヒーの水洗作業に、パダマラン山からの天然の湧き水を利用していました。水洗が不十分だと、その後の豆の品質に関わるため、丁寧に精選し、軽い豆や不純物を取り除くのだそうです。

手作業による豆の選別は地元の若い女性たちが行っている 手作業による豆の選別は地元の女性たちが行っている

 

脱肉された豆。天然の湧き水できれいに洗い流され、つやつや

 

 

水洗した豆は、その後、天日と機械でしっかりと乾燥。機械で大きさごとに選別した後は、ハンドピックによって欠点豆を徹底的に除去します。虫喰いやカビ、発酵した豆など味に影響する豆を徹底的に取り除くことで、雑味のない美味しいコーヒーになるのだとか。この後、厳しい基準のカップテストを最低4回クリアした豆だけが、出荷されていくそうで……。この徹底した管理には驚きです。

「インドネシアの山奥で収穫した高品質の豆を使って、日本人のクオリティで生産管理していることが、トアルコ トラジャが評価されている理由のひとつだと思います。以前、アメリカから視察がいらした際も、たいへん驚かれていました」

時間の感覚や、労働への姿勢、宗教(インドネシア全体ではイスラム教徒、トラジャはキリスト教徒が多い)など、インドネシア人と日本人では異なることが多いのが現状です。そんな状況でも、現地の人々と一丸となってコーヒーの品質向上に努めている姿が印象的でした。
トアルコ トラジャのコーヒー豆は日本でも購入が可能です。遠く離れたインドネシアの地でつくられた、吉原さんをはじめ日本人の努力の結晶とも言えるコーヒー。世界では、まだまだ日本人が活躍している場所があるんですね! ぜひ一度試してみてください。

 


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(取材・文/大野麻里

おおのまり/エディター・ライター

美術大学卒業後、出版社勤務を経て2006年よりフリーランス。雑誌や書籍、広告、ウェブなどで企画・編集・執筆を手がけている。得意ジャンルは住まいやインテリアなどの暮らしまわり、旅行、デザイン関係など。シンプルで機能的なものが好き。働く主婦の目線で提案。

 

 

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