「明日終わっちゃうかもしれないと思ったらやるでしょ」巨人ドラ１・石塚裕惺の心に響いた鉄人からの金言

野球殿堂博物館を見学した石塚は王氏のユニホームの前で笑顔を見せた（代表撮影）

　日本野球機構（ＮＰＢ）の新人選手研修会が１０日、都内で行われ、１２球団から１２１人が受講した。巨人のドラフト１位・石塚裕惺内野手（１８）＝花咲徳栄＝は、同じショートを守った元阪神・鳥谷敬氏（４３）の講義を聞き、目標設定の重要さを実感。将来の目標である「２０００本安打」を達成するためにも、“魂”を継承し、令和の鉄人を目指す。

　遊撃手の最高のお手本である鳥谷氏による約３０分の講義。石塚は１列目のど真ん中で授業を終えた。「これ以上ない貴重な時間。鳥谷さんは『４０歳の時にショートでレギュラー』という目標を立てたとおっしゃった。考えるところが自分とは全然違うな、より具体的に考えてるなと思った」と充実した表情で振り返った。

　具体的だと感じたのは、夢を実現するまでの方法だ。鳥谷氏はプロ入り時に長期的な目標を「４０歳でショート」とした上で、「チームで中心選手」と「メジャーリーグに挑戦」を中期的、「レギュラーになる」を短期的な目標に定め４０歳まで現役を続けた。大きな成功は小さな成功を積み上げた先にある。２０００安打という大きな目標を掲げたドラ１ルーキーにとって、身の引き締まる思いだった。

　“千里の道”を踏破したレジェンドの言葉だから重みがある。鳥谷氏は遊撃手としては、史上最長となる６６７試合連続フルイニング出場＆史上最多の６季フルイニング出場を果たした。１７年５月には鼻骨を骨折しながら翌日の巨人戦にフェースガードを着用して出場し、鉄人の異名を持った。「やるかやらないかで考えたときに、明日終わっちゃうかもしれないと思ったらやるでしょ」と“鉄人道”の金言を説かれ、「その話は本当に心に響いた部分だったので、そういう考え方をしていこうかなと」と目を輝かせた。

　石塚も小学６年時、ロッテジュニアの選考会が開催される３週間前に左手首を骨折。完治はしていなかったがサポーターをつけて臨むと試合形式の練習でホームランを２発。積極的にカルシウムを摂取するなど前向きな姿勢を実らせ無事に合格した。小学生ながら毎日、１日５００回の素振りを続けるなど“鉄人遊撃手”としての片りんを見せる。

　大志を抱き飛び込むプロ１年目。鳥谷氏からは「高卒だからこそ、大卒よりも時間的な猶予は必ずある。しっかり活躍している選手を間近で早く見られるのは非常に大きい」とエールも送られた。金の卵は「１年目で１軍で安打を打つ。今自分が最終的な目標にどうすれば近づいていけるのか考えながら、練習したり生活していければ」と前を見据えた。小さくとも着実な一歩を積み重ね、令和の鉄人として２０００安打を達成する。（臼井　恭香）

　◆遊撃手の全イニング出場　巨人では白石敏男が１９３６年秋、３７年秋、４０年の３度、坂本勇人が２０１０年の１度で２人４度。全体では鳥谷敬（阪神）が０６、０８、１２～１５年の６度で最多。次に濃人渉（大洋、西鉄）が４１～４３年、田中広輔（広島）が１６～１８年、白石が３度となっている。

　◆新人研修会スケジュール

　▽１０時１５分～１１時４０分　野球殿堂博物館見学

（昼食）

　▽１２時３０分～１３時　講義１「アンチドーピング活動・脳震とうについて」

　▽１３時～同２０分　講義２「税の意義と役割」

　▽１３時３０分～同５５分　講義３「薬物乱用防止について」

　▽１３時５５分～１４時２５分　講義４「暴力団の実態と手口」

　▽１４時３５分～５５分　講義５「ＳＮＳの使用モラルと危険性について」

　▽１４時５５分～１５時２５分　講義６「有害行為について」

　▽１５時３５分～１６時５分　講義７「先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ（講師・鳥谷敬氏）」

　▽１６時５分～同１０分　セカンドキャリアサポートについて

　▽１６時１０分～同２０分　アンケート記入

　▽１６時２０分～同３０分　修了証授与

　〇…鳥谷氏が「先輩プロ野球選手からプロ野球選手の後輩へ」の議題で講義。「目標設定について」、「時間について」、「数字について」、「個人の役割」、「終わりを考える」の５つのテーマで自身の経験を踏まえて熱弁。「思っているよりもたぶん野球選手は大変だよというのを一番伝えたかった。どう努力していくかをそれぞれが考えてやってもらえれば」とメッセージを送った。