突然「あなたうつ病かもよ?」というメールが届いたらどうする?
インフォシーク / 2012年5月23日 14時0分
「あなたうつ病かもよ?」という旨のメールが、この1週間で2通も届いた。文面はこちら。
「気のせいならいいのですが、友人として、どうしても心配なことがあるんです。わたしが最近のあなたを見ていると、ストレスをため込んでいるように見えます。すこし無理をしていませんか?思い過ごしならいいのですが、すこしリラックスされるといいのかな、と感じています」
これは嫌がらせでも何でもない。しかしメールを開封した瞬間は微妙な気持ちになったし、確かにそうかも知れないとも思った。それにしても誰が、いつ、どこで私のことをうつっぽいと思ったのか? 暗いツイートをしていたせいなのか? へこんでいると最近誰かに愚痴っただろうか? 色々なことが頭を駆け巡る。
うつ病にWebからアプローチしたい
このメールは、先週リリースされたばかりのWebサービス「うつ通知サービス“うつっぽ”」を通じて送られてくるもの。運営元の株式会社U2plus代表・東藤氏によると「うつ病の自己診断ツールを試そうという考えのない方に利用してもらいたい。既存の自己診断ツール以上の情報提供を目指している」とのこと。
東藤氏自身もうつ病歴3年だという。WHOの調査では数百万人いると言われている、重度のうつ病患者もうつ病の診断を受けに行かずに過ごしているというデータが出ている。自身の経験してきたことも活かし、うつ病にWebからアプローチする手段として、うつっぽを作り出した。
うつっぽの使い方は非常にシンプルである。うつっぽのサイトで「うつっぽいかも知れないな」と思う人の名前、メールアドレスを入力し、自分との関係性を選択して送信するのみ。届いたメールには上記の定型文言だけでなく、うつっぽさチェックテストのリンクもある。テストしてみることにしよう。
5問のチェックテストに回答すると、うつっぽさのレベルが数字で表されるとともに、対処法がいくつか出てくる。私は5~9点でうつっぽさ50%と診断された。躁うつの傾向があるため分からないことはないかも……と納得したが、一体誰がいつどこでという疑問は頭を去らないし、何だかムズムズする。他の人の意見も聞いてみたい。
「このサービスで救われる人は果たして多いのかと疑問に思います。やはり匿名の20人が言うよりも、身近な人が面と向かって言ってあげる方が、確かにショックかも知れないけど助かるのではないかと。『うつ病かもよ?』と指摘するのは勇気がいること。言う側の覚悟も試されると感じます。自分の恋人がうつ病かも知れないと思ったら、匿名メールを送っている場合ではないですよね」(株式会社プレスラボ代表取締役社長・梅田カズヒコ氏)
梅田氏は「鼻毛通知代理サービスチョロリ」というサービスが昔あったことを指摘し、うつっぽはこれと同じようにして、単に通知するだけでは配慮に欠けると指摘。チョロリは相手に「鼻毛が出てるよ」と通知するサービス。指摘したいけれど直接は言いづらいことという意味では、うつっぽと似ているかも知れない。ただ、鼻毛は冗談にできてもうつ病は笑いごとではないからだ。
改善求む! 現状の「伝え方」は問題アリ
さらに数人の友人に「テストとして送るね」と伝えてから、うつっぽからメールを送信してみた。受け取った感想を訊いてみたかったのだ。
「事前に知らずに開封すると、占い師からの勧誘かと思ってしまいそう」
「何も知らずそのメール受け取ったら、迷惑メールだと思うかも(笑)。あと、誰かの前で元気なかったかな?と自分の行動を思い返してみるかな」
「怪しいメールかと思った」
三者とも「誰かが真剣に自分のことを心配してくれているメールだ」とは受け取っていない。メールの内容が定型文であること、匿名で送られてくることに大きな原因があると思う。匿名で送るか実名で送るか選択できると良いのではないか。また定型文にプラスアルファして、個別にメッセージを入れられるようにしたらどうかとも考える。
人間味のない機械的なメッセージは無機質で冷たい。「1通のメールで、あの人を守れるかもしれない」というせっかくのコンセプトが「1通のメールで、あの人を傷付けるかもしれない」にすりかわっている可能性も。もし重度のうつ病者が50人から、まったく同じ文言のメールを受け取ったとすると、気がおかしくなるのではないか。
うつ病の恋人を持つ男性はこんな意見だ。
「正直なところ、うつっぽの“伝え方”には問題があるけど、サービスとしての意義はあると思う。伝えることは大事。ただし伝えるときには、言葉を慎重すぎるくらい慎重に選んだ。重たくもなく、それでいて軽くないようにと」
ネット上にはうつっぽに関して、様々な賛否両論の意見が寄せられている。代表の東藤氏はそれらの意見を踏まえて、今後も改善を図っていくと発表していた。個人的にはやはり、誰が、どう伝えるかといった、ナイーブな部分の改良を早急にしてほしいと願っている。
いけだ・そのこ フリーランスのライター/ディレクター。86年生まれ。ポータルサイト運営、メディア運営を経て独立。Web周りのおもしろネタを誰にでも分かるように紹介し、Webから発生するワクワクを共有したい。その他、新しいモノ、会社、働き方、ガジェット、恋愛ネタを主に書いています。最近の興味・関心はコミュニケーション全般。
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