トヨタ・スズキ提携交渉“第2のトヨス”か? その3
Japan In-depth / 2016年10月24日 22時0分
遠藤功治(株式会社SBI証券)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
4)俊宏社長CEOはどこにいる?
10月12日の記者会見、場所は後楽園にあるトヨタの東京本社、会見に臨んだのは、トヨタ側が豊田章男社長、スズキ側が鈴木修会長。よく考えるとこれはおかしい。スズキ側は何故、俊宏社長ではないのか。いや、トヨタに提携を申し込んだのは修会長だから、実権はまだ修会長にあるから、云々。86歳の修会長がまだお元気であることは確か、その発言内容も面白い、はっきりと考え方を伝えるプレゼンテーション能力はまだまだ健在、それはその通りです。
しかし、5月に発覚した燃費測定方法の偽装の責任を取って、修会長はCEO職を俊宏社長に渡しました。つまり、スズキ株式会社の代表取締役CEOは、鈴木俊宏社長な訳です。トヨタとの歴史的な提携の記者会見、それもトヨタ側は豊田章男社長なのだから、スズキ側も鈴木俊宏社長でなければおかしい、と思うのはこの筆者だけでしょうか。
俊宏社長は社長就任からほぼ1年が経ちましたが、ただでさえ偉大なる親父さんと比較され、やれ線が細いだの、経営能力が無いのだのと、外野から揶揄されっぱなし、修会長が34年間の社長・会長職を歴任しているのに対し、俊宏社長はまだ1年間の経験しかない訳で、比較対象する方がおかしい。修会長は完全に権限が禅譲されるまで5年間ほどはかかると某誌でお話をされているようですが、今回の共同会見に社長が出ずして、何の肩書きだろうかと大変残念に思う訳です。
この会見を見ていると、今回の提携は本当に全て修会長主導によるもので、俊宏社長には後から結果が通告されただけ、という印象を持たざるを得ません。社長交代の際、修会長が公言していた通り、経営方針の決定は会長が行い、社長はそれを執行するだけ、ということになります。これが示唆するところは、やはり修会長が引退する前に、スズキという会社にトヨタというセイフティーネットをかけておく、そのことでスズキという企業の将来への心配の種を最小限に抑えておきたい、ということなのでしょう。共同会見で、両社の提携内容の詳細は一切語られませんでした。それはそうでしょう、まだ何も決まっていない(豊田社長)のだから。ただ世間に、この2社は今後協業に向けて話し合っていく、というメッセージを投げること自体が重要だったのでしょう。修会長から見て、ここ4-5年はまだスズキ1社でがんばれるにしても、2020年か、2030年か、今後10年ないしはその先の段階で、自動運転やIOT技術、PHVやEV・FCV技術がどこまで発達しているのかはわからないが、やはりそこまでの技術革新をスズキ1社でやり遂げ、かつ競争に勝ち続けるのはしんどい、修会長の腹の中はこうでしょう。スズキの将来への保険、競争に勝ち続ける上での担保、今回の提携の性格はそういうものだと考えます。
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