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私のパフォーマンス理論 vol.48 -燃え尽き症候群-

Japan In-depth / 2019年12月27日 7時0分

私のパフォーマンス理論 vol.48 -燃え尽き症候群-


 為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)


 


【まとめ】



燃え尽きる状況は、大きく三つに分けられる。目標を達成してしまうこと、強い重圧を受けること、主体性が失われること
燃え尽きないようにするには自分を知ることに尽きる
もし燃え尽きてしまった場合は、休む、距離を取る、何も目指さない

 


燃え尽き症候群というものがある。ある日、燃え尽きたようにやる気が出なくなってしまうものだ。私はメダルを獲得した後、それから強いプレッシャーに晒された時に近い経験をした。その時の経験から学んだのは、心にも体力があり限界があるということだ。


その経験を経てから、それまでは目標のためには自分を蔑ろにするところがあったが、かなり繊細に自分の心を扱うようになった。結局それで自分の心が壊れてしまえばそもそも目標に向かう動機がなくなってしまう。自分で自分の心を壊してしまわぬように、また他人に侵食されないように、常に自分の心を観察し、みずみずしさが失われないように気を使った。体の疲労は体感しやすいが、心の疲労は気を使って観察しないと理解しにくい。そして心の故障の方が複雑で回復に時間がかかる。


燃え尽きる状況は私の分析では、大きく三つに分けられる。目標を達成してしまうこと、強い重圧を受けること、主体性が失われること、だ。


人間は目標のために頑張るが、目標達成のためにあまりに犠牲を払いすぎると、達成した瞬間燃え尽きてしまうことがある。この燃え尽き型は目標達成が全てでありそのために日常を犠牲にするという感覚が強すぎるタイプが多い。視野を狭めて目標に対し執着すれば確かに達成する確率は高まるが、長期的にこの状態でい続けられるほど心が強い人はそうそういない。


もう一つは強い重圧を受けることだ。自分がやりたいと思うこと以上に、周囲の期待が高まると、人はプレッシャーを感じるようになる。高地にいくとなんとなく息苦しいという感覚になるがあれに似ている。夢中は義務に弱く、重圧は義務を生み出しやすい。重圧にさらされることで、目標がノルマのように感じられ計画通り進まなくなった時に強くストレスを感じ心が疲弊する。


主体性が失われて耐えきれず燃え尽きることもある。主には主導権が指導者にあるような環境でこの状態になりやすい。ある程度機械のようになれる選手はダメージを受けにくいが、自分で決定するということを重視する選手はこの状況に長くいると適応できず燃え尽きてしまうことがある。


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