3.11の戦訓活かせぬ防衛省/自衛隊
Japan In-depth / 2020年3月30日 7時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・防衛省、自衛隊は国民を守ることより自己利益を優先。
・当事者意識と能力の欠如により、以前の教訓が生かされてず。
・自衛隊の当事者意識と能力の欠如を国民は知ることができず。
今年で東日本大震災発生から9年目を迎えた。震災の現場に投入された自衛官は多数に上り献身的に働いた。その一方で派遣に際しては多くの問題が露呈した。だが多くのメディアは健気に働く隊員を褒め称えるだけで、自衛隊の持つ欠陥を検証することはなかった。防衛省・自衛隊自身も問題点は無く、災害派遣は大成功だったと自画自賛している。
今後同様な大災害が起これば、自衛隊は同じような過ちを起こし、大きな禍根を残すだろう。それは人災だ。既にその後も熊本震災など大規模な災害が多数起こっているが、防衛省・自衛隊はまったく反省していない。
▲写真 防衛省 出典:flickr: くーさん
■ 通じない無線機
まず東日本大震災で問題だったのは陸自の無線機が通じなかったことだ。この問題は、筆者は震災前から度々指摘していた陸自の無線機が通じないし、数も定数を大幅に割っているので演習では隊員たちは自前の携帯で電話を使っていた。使わないと演習が成り立たないからだ。軍隊ではありえない話だ。同じ条件でも在日米軍の無線機は通じるのだ。
東日本大震災では携帯の基地局も壊滅状態だったので、無線機を使うしか無かった。だが無線機の数が定数に遥かに満たない上に、世代の違う無線機が混在しており、無線が通じない、混信が激しいといった事態が起こった。さらに根源的な問題はそもそも周波数帯が軍用無線に適していない周波数帯を割り当てられていることだ。これで現場は大混乱になっていた。
ところが陸自が震災後に採用されたNEC製の広域多目的無線機は周波数帯の見直しを行わないまま導入された。そして当然のように部隊では「通じない無線機」と評判が悪い。これを使わずに旧型の無線機を演習に使っている部隊もある。
これはいくつか理由がある。まず防衛省が国交省の折衝することが面倒くさいということだ。かつての内閣の外局に過ぎなかった防衛庁時代ならともかく、政策官庁に格上げされた防衛省なら、任務遂行に必要な法改正や他省庁との折衝を行ってしかるべきだが面倒くさい仕事から逃げている。
そして現在の周波数帯では外国製無線機が導入できないので、一種の非関税障壁となっているからだろう。つまり周波数帯をまともなものにすると、性能や価格の面で外国製と競合しなければならない。現状ならば低性能で高価格な国産品を売りつけることができ、メーカーに天下りも押し込める。
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