「日本は香港問題で中国に制裁を」米研究機関提言
Japan In-depth / 2021年3月10日 11時0分
古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)
「古森義久の内外透視」
【まとめ】
・「香港問題で日本は中国に抗議していない」とCSISが意見表明
・「自由な香港」は日本の国益に合致。共同の制裁措置をとるべき
・菅政権への根幹的な疑問が、バイデン政権の認識に重なる可能性も
アメリカの大手研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は2月26日、中国政府の香港での民主主義や自由の弾圧に対して日本政府が抗議の行動を起こし、中国側への具体的な制裁措置までをとるべきだとする意見を発表した。
この意見は同研究所が定期的に公表する「日本を討論する」という議論のサイトで明らかにされた。同意見は「日本は香港問題で(中国政府への)圧力を増すべきだ」と題されていた。
この意見はCSISが委嘱した国際基督教大学の国際関係専門のスティーブン・ナギ上級准教授の見解を主体としていた。
その見解は中国政府の最近の香港に対する一連の弾圧行動に対して日本はアメリカなど他の民主主義諸国にくらべて、積極的な抗議をみせていないという不満の表明でもあった。
CSISはワシントンでも最大級の研究機関で、超党派に近く、民主党のバイデン政権とも良好な関係にある。このため同研究所の活動や発表はバイデン政権からも注目されており、今回の日本への不満の表明がバイデン政権の認識に重なるという可能性も否定できない。
▲写真 菅義偉首相(2021年3月2日 首相官邸) 出典:首相官邸ツイッター
CSISのこの意見は以下の骨子だった。
・日本は「自由で開かれたインド太平洋」構想に基づき、香港の自由や民主主義の保護のために日本自身の外交的、経済的な資産を動員するべきだ。香港の統治の透明性を求めるべきだ。
・日本にとっては香港のこれまでの独立した司法、自由な報道、透明で法の支配に基づく法律の枠組みこそが日本の香港や中国本土への投資活動にとっての安定し、透明な基盤を与えてきたのだ。
・日本政府は香港での出来事に対して積極的な言動はとっていない。日本は2020年7月のG7外相会談での香港に関する共同声明には加わったが、それ以外には政府としてほとんどなんの言動もとっていない。
同意見はまず日本に関するこの主題での全体の主張と背景を以上のようにまとめていた。そしてさらなる詳細や具体的諸点について次のように述べていた。
・日本の国会の超党派のグループが香港の民主活動家の周庭氏らが2020年12月に拘束されたときに中国政府への抗議の声明を出したが、この種の声明は日本政府の政策にはほとんど影響はなかった。
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