平成24年の年賀状「リチャード・W・ラビノウィッツ先生のこと」・「様々な葬儀のこと」
Japan In-depth / 2023年9月13日 13時45分
母親の葬式は広島で営んだ。私は55歳。友人のメディア・コンサルタントの方が新聞に働きかけてくれ、母親の死去を死亡広告として掲載してくれる運びになった。
それだけなら何ということはなかったのだが、秘書を通じて長年の依頼者の一部に知らせた。その結果、広島での母親の葬儀に副社長さんが二人もご出席くださることになってしまった。
私は少なからず慌てた。世間ではそういうことが起きてしまうのだと反省した。大変申し訳ないことをしてしまったと今でも思っている。東京から朝の飛行機に乗って葬儀会場に駆けつけてくださったのだ。私が秘書を通じて依頼者の一部に母親の死去を伝えたのは、花輪を出していだたければありがたいという考えがあったからだろう。これも今思えば恥ずかしいことである。母親が亡くなってしまったのは、もちろん子どもである私には悲しいことだった。だが、仕事のうえでお付き合いさせていただいている方々には何の関係もないことである。それを、わざわざ知らせれば、それも葬式に間に合うように知らせれば、放置するわけにはいかないと考えてくださった会社があったということだ。
もちろん、今でもどこの誰、あそこのあの方とよく覚えている。帰りの飛行機便が羽田上空で待機を余儀なくされ着陸がひどく遅れてしまったというアクシデントもあった。二重にご迷惑をかけてしまった。よく覚えている。
葬式といえば、こんなことがあった。
或る顧問先の会社の社長のご母堂が亡くなられた。このときには会社のほうから、葬式の日時を知らせたうえで、出席の要請があった。未だ若い弁護士だった私は、わざわざ知らせくださっただけでなく葬儀への出席まで期待してくださったことが嬉しかった。喪主である社長がキリスト教徒であったから、キリスト教式の葬儀というものに初めて出席したのだった。私にとっては、妙なことだが、晴れがましい式だったということになる。
以来、何回仕事で存じ上げている方のご母堂の葬儀に出席したことか。どういうわけかご母堂ばかりだった気がする。列に並んでいると会社の方が私の存在に気づいて、「先生、こちらへ」と声をかけてくださることが多い。すると、前に並んでいる方々に頭をさげて先導された格好で急ぎ手を合わせて早々に退出することになる。
盛大な式だったのは、河村貢先生の葬儀だった。
河村先生には生前可愛がっていただいた。ご尊父以来の三菱地所の顧問弁護士でおありになり、また日本生命の社外役員でもあられた関係で、いろいろ仕事の面でお教えを乞うことが多かったのだ。もちろん、三越事件の本は興味深く拝読した。
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