平成26年の年賀状・「本を読むことこそ我が人生」・「ヘミングウェイの『移動祝祭日』と石原さんのこと」
Japan In-depth / 2023年11月16日 12時26分
ヘミングウェイは続ける。
「私は彼女を愛していた。彼女だけを愛していた。二人きりになると、素晴らしい、魔法のようなときを彼女とすごした。私は仕事に励み、彼女と忘れがたい旅をし、これでもう二人は大丈夫だと思った。けれども、晩春になって山を離れ、パリにもどってくると、またもう一人の女のことがはじまったのだ。」
そしてヘミングウェイは第一の妻と別れる。ヘミングウェイ27歳である。すぐに二番目の妻と結婚する。
その二番目の妻とも13年で別れ、すぐに三番目の妻マーサ・ゲルホーンと結婚する。
三番目の妻とは5年で別れ、そして4番目で最後をみとった妻メアリー・ヘミングウェイと結婚することになる。二番目の妻も三番目の妻も、どちらも自分の考えをはっきりと持ったジャーナリスト、作家の女性だった。
四番目の妻は?
メアリーとマーサは同じ歳である。ヘミングウェイからは8歳年下。3番目で年上の女性しか愛せない状態からやっと脱出できたのか。
『移動御祝祭日』のなかにこんな一節がある。若い、未だ無名のヘミングウェイがカフェを執筆場所としていたときのことである。
「一人の若い女性が店に入ってきて、窓際の席に腰を下ろした。とてもきれいな娘で、もし雨に洗われた、なめらかな肌の肉体からコインを鋳造できるものなら、まさしく鋳造したてのコインのような、若々しい顔立ちをしていた。髪は烏の羽根のように黒く、頬にかかるようにきりっとカットされていた。
ひと目彼女を見て気落ちが乱れ、平静ではいられなくなった。いま書いている短編でも、どの作品でもいい、彼女を登場させたいと思った。しかし、彼女は外の街路と入り口の双方に目を配れるようなテーブルを選んで腰を下ろした。きっとだれかを待っているのだろう。で、私は書き続けた。」
文章を書き続けながら、彼は「顔をあげるたびに、その娘に目を注いだ。」
「ぼくはきみに出会ったんだ。美しい娘よ。君が誰をまっていようと、これきりもう二度と会えなかろうと、いまのきみはぼくのものだ、と私は思った。きみはぼくのものだし、パリのすべてがぼくのものだ。そしてぼくを独り占めにしているのは、このノートと鉛筆だ。」(17頁)
おもしろい書き分けがある。
この美しい娘をみて、「私は書きつづけた。」という最初の場面では、書いているヘミングウェイにとって「ストーリーは勝手にどんどん進展していく。それについいてゆくのが一苦労だった。」とある。
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