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団塊の世代の物語(9)

Japan In-depth / 2024年10月15日 23時0分

でも本当は『カニ屋』と人々が呼んでいた一種の娼館で知り合った女性。





悪くいっているのではない。娼館で知り合っても真実の恋はあり得る。それが人間というもの。」





三津野は自分のことを思いだしていた。鷗外のことなど批判できない。銀座でいくつの恋を拾ったことか。銀座のクラブは娼館ではない。しかし、男女関係を前提にしなければ成立しない人間関係が商売の根幹にあるところだ。





「普請中か。そうだね。





明治43年、1910年の日本は鷗外の目に建設途上だと見えた。





今の日本は?





再建途上だね。





その新しい設計図が、安倍晋三元首相の提唱したスチュワードシップであり、コーポレートガバナンスてことだ。それぞれ2014年と2015年。今、世にはジョブ型雇用、人的投資という言葉もはやっている。





それでうまく行くのかな。





大木先生は、『機関投資家とアクティビストの幸福な同棲』って説いている。」





<また大木弁護士のことになる>





頭のなかで舌打ちをした。





「株主を中心としたマルチステークホルダー論が決め手だって、大木先生はいつも言っている。





日本の巨大企業の株は海外の投資家がもっている。でも、そうした機関投資家は投資先の監視コストをかけたくない。いわゆるパッシブな投資だからね。あなたも良く知ってることだよね。





そこでアクティビストの登場となる。豊富な資金で投資先企業の分析をし、株主提案をためらわない。それどころか、スチュワードシップに自ら縛られることを誓約してしまっている機関投資家は、良質なアクティビストの提案には賛成するほかない。スチュワードシップとは受益者、すなわち年金受給者の利益のために行動する義務を意味しているんだから、もう自分たちの手は自ら縛っているのさ。というか、そもそもその手は年金受給者のために存在していたのに、国内の機関投資家は親会社なんかの利害を優先することが多かった。間違っている。





ちなみにいっておくとね、アクティビスト対会社という発想からして単なる誤解なんだよ。」





「えっ?どうして?」





「そうじゃないか、アクティビストは機関投資家に働きかけるしかない、それ自体は限界のある存在さ。でも、機関投資家が賛成してくれれば別世界が開ける。機関投資家は会社を動かす力を持っているからね。株主の過半数の賛成を確保されれば、どんなに有力な社長でもアウトさ。





この間、キャノンの御手洗さんが危うくアウトになりかかった。」





「私、アクティビストにもっと期待しているの。





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