1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

団塊の世代の物語(9)

Japan In-depth / 2024年10月15日 23時0分

たとえば最近のフジテック。





アクティビストの議決権に恐れをなして取締役候補から降りたはずの前の社長に、社外取締役までいっしょになって会長っていう訳の分からない肩書を与えた。で、それに賛成した社外取締役の入れ替えをするんだってアクティビストが言い出して、臨時株主総会になって、新しい取締役たちが選ばれてガバナンスが変わったでしょ。





あれ、少数株主に過ぎないアクティビストになにができるかを広く世の中に示したと思うの。





もちろん、あなたが言うとおり、機関投資家が後押しして初めて過半数になったということはわかっているつもり。でも、アクティビストが言い出さなかったら、なにも起きなかったんじゃないの。」





英子は身体を半身に起こして三津野に向かって話している。





二人の身体が少し離れてしまっているので、三津野には英子の二つの大きな乳房と小さな乳輪がいやでも目に入る。少ししわがよっていて、でも大きな形をたもっている。





三津野は、





「そのとおり、フジテックのガバナンスは変わった。





こうした波紋をいくつも生みながら、日本のコーポレートガバナンスが実質化していくいくつもの事件の一つだ。これからも次々に起きてくる。もう戻らない。」





英子が三津野に身体を寄せ、両腕を背中にまわした。その指先に力がこもる。





「それを私はあなたとやっていくつもりなの。」





「わかっている。」





「私は大木先生の最近おっしゃっている丹呉3原則っていうのの信者よ。





日本経済の復活には、一つ、政治頼みではうまくいかない。二つ、コーポレートガバナンスしかない。三つ、必要なら海外の力も借りる。」





三津野の左の耳元で英子の声が大きく響いた。





「そうさ。





そして、遂に、というか、やっと、セブン・アンド・アイ・ホールディングに買収提案がされた。カナダのアリマンタシォン・クシュタールっていう名の会社だ。





来たね。





去年の8月31日に企業買収指針が経産省から出されている。





それで敵対的買収はなくなった。同意なき買収と呼ぶことになった。





きっとセブンは買われる。





問題は、次はどこかだな。どこになっても不思議はない。日本の会社は実現されていない企業価値の宝庫だからね。





ウチ、滝野川不動産なんて格好のターゲットかもしれない。含みが多く、経営は幹部従業員協同組合の見本みたいなところだからね。縁故で入社したのもたくさんいる。会社への忠誠心の塊だ。会社は決して裏切らないと信じている。」





背中に置かれた英子の指さきに力が入って、爪が皮膚に食い込む感覚があった。





この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください