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団塊の世代の物語(9)

Japan In-depth / 2024年10月15日 23時0分

「戯画だね。カリカチュアだ。でも、そのとおりだった。





日本という国家が、第二次世界大戦の敗戦のあと、一貫して国の安全保障を全面的にアメリカに委ねてきた。それがゆえの必然の帰結だ。僕も日本人の一人だから他人のことはとやかく言えない。





今になって思うのさ。プラザ合意以降の経緯は第二の敗戦と呼ぶに値する、ってね。」





突然、英子が両腕をベッドの毛布から出して大きく拍手した。





「始まり、始まり」





英子の声が二人だけの部屋に響いた。「翌年が日米半導体協定だ。





牧本次生さんという方にお話をうかがったことがあるんだ。





日立の専務をやってからソニーの専務になったという、日本としてはまことに珍しい履歴の方だよ。」





『日本半導体復権への道』っていう本を読んでね。」





<ああ、これも大木弁護士のおすすめだったけな>





そう思い出すと、なぜかまたも心が騒ぐ。しかし、素知らぬふりをして、





「2年まえに産経新聞の寺田理恵記者が書いていた記事で牧本さんのことを知って興味を持って、買って、すぐ読み始めた。





夢中になって読んでて、笑っちゃうん話なんだけど、出張があったからこりゃ時間がとれてちょうどいいやと持って行ったつもり。





ところが荷物に入ってない。で、しかたがないから大阪で同じ本をもう一冊急いで買って、読み継いだんだよ。一気に読み終わってしまった。だから、牧本さんにお会いした時に、『実は私の「日本半導体の復権への道」は上下2巻本なんです』、って申し上げたのさ。





『ミコロビシオキ』の半導体人生と仰ってる。」





「ミコロビ?シオキ?」





「うん、『半導体の市況は予測不能』だそうで、牧本さんの半導体人生を振り返ると四つの山と三つの谷の時代があったということらしいんだ。」





「それで三転び四起き、っていうわけ。面白い方ね。私もお会いしてみたい。」





「おもしろいよ。





たとえば、週刊誌に『日立製作所 従業員八万三千人のトップに牧本氏有力』って書かれたら、ある先輩に、牧本君の社長の芽があるかと思っていた。でも、これだけの出る杭になったので難しくなった気がする、と言われたそうだ。





それって、僕もいくつも思い当たる。マスコミはそれなりの予測をする。でも、それ自体が将来を決定する否定的な要素になってしまうことって、特にトップの人事ではよくあることなんだな。





僕自身も、滝野川のトップ候補なんて書かれてしまったときには、ヒヤヒヤしたよ。」





「でも、三津野さんはその通りになった。自己実現?」





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